太陽光で0円料理。チリで広まる「ソーラーレストラン」

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日本は2030年に向けて、太陽光発電の導入量をさらに積み増すことを検討している。経済産業省によると、2019年度の太陽光発電の導入量は55.8ギガワットで、現行の政策努力を継続した場合、2030年には約88ギガワットを導入できる見通しだという。さらなる導入拡大に向けて政策強化が進むなか、いかに地域と共生するかたちで、太陽光発電に取り組めるかが鍵となる。(※1)

地域と共生するには、その土地の気候を生かすことも大切だ。世界で最も降水量が少ない場所のひとつで、暑さが厳しいチリのアタカマ砂漠では、近年、太陽光で料理をする人たちが増えているという。その背景のひとつとして、サステナブルな活動の重要性が高まっていることがある。たとえば、太陽エネルギーを活用した持続可能な開発を促進する、同国の研究センター「SERC Chile」は、昨年、ソーラーオーブンを自作する方法を説明したマニュアルを公開した。(※2)

Ayllu Solar

Image via Ayllu Solar

実は同地域における、ソーラークッキングの歴史は長い。アタカマ砂漠近くのVillasecaという村で、太陽光で料理する取り組みが始まったのは、1989年だという。チリ大学の研究者たちと、地元で暮らす25の家族が、ソーラークッキングの実験を始めたことがきっかけだった。当初の目的は、孤立した村で暮らす人たちが、無料のエネルギーを駆使して貧困から抜け出せるようにすることと、薪ストーブのために残りわずかな木を伐採することなく、料理ができる方法を見つけることだったという。

こうして、放射熱を利用したパラボラ型のソーラークッカーや、ソーラーオーブンの使い方を学んだ住民たち。最初の頃は、家族に振る舞う料理を作るために使っていたが、その様子が期せずして、村を訪れる観光客たちの注目を集めることになる。そこで、2000年には、太陽光で作った料理を振る舞う「ソーラーレストラン」をオープン。このレストランは順調に規模を拡大させ、Villaseca内にさらに2店舗をオープンした。(※3)

この他にも、チリ北部の乾燥した地域には、数多くのソーラーレストランが存在するという。ルース・モスコソ氏は、アタカマ砂漠北部のオアシスに位置するピカという町で、ソーラーレストランを営む一人だ。モスコソ氏は、4台のパラボラ型ソーラークッカーを用いて、伝統的なアンデス料理を提供している。同氏は、BBCの取材に対し、自身の取り組みについて次のように語っている。

「私たちの文化では、環境のことを強く意識します。そこで、私たちは、母なる地球を大切にする伝統、倹約の文化、そして今ここにある太陽と熱を最大限に活かして、何かをしようと考えました。つまり、この取り組みは、伝統と革新の融合によって生まれたのです。」

約30年前に小さく始まったソーラークッキングが、徐々に広まっているアタカマ砂漠。砂漠の料理人たちは、この取り組みを「サステナブル」という言葉では捉えていないかもしれない。もとをたどれば、これは生活のために生まれた知恵であったし、これほど豊かな太陽に恵まれていれば、そのエネルギーで料理をしようと思い付くことは、ごく自然な流れだったのではないだろうか。

日本においても、2005年に日本ソーラークッキング協会が設立され、長年普及活動を行っている。ガスや電気を使わないエコな調理法であるソーラークッキングは今後、災害対策などでも注目されていくのではないだろうか。

※1 2030年における再生可能エネルギーについて(経済産業省)
※2 Ayllu Solar
※3 EntreCordillera Restobar

【参照サイト】 The desert chefs who cook with the sun – BBC Travel

Edited by Erika Tomiyama

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