“I’m Hungry” たった一言で生活困窮者が食事を注文できるプラットフォーム「Bento」

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米国農務省が発表した「米国における家庭の食料不安」に関する最新の報告書(※1)によると、2020年、同国内では3,800万人以上が飢餓状態に陥っていたことが分かった。一方近年では、食料の生産過程、もしくは店頭に並んでから廃棄される「食品廃棄」や「食品ロス」が課題になっている。

食料の不足と余剰──そんな「食の不平等」を是正するために、これまで世界中で、フードバンクなどの食料支援活動が行われてきた。それらは食品の無駄をなくし、人々の空腹を満たす素晴らしい仕組みであるが、一方で、実際に生活に困窮する人のなかには、「フードバンクを利用している人」というレッテルを貼られることを恐れ、利用しない人もいるという。

そこで、「日々の食事に困っている人たちが、自らの自尊心を守りながら食べ物を得ることができたら……」という想いから生まれたのが、カリフォルニアのNot Impossible Labs社が開発したプラットフォーム「Bento」だ。生活に困窮する子どもや家族が、“Hungry”と一言ショートメッセージを送るだけで、食事を注文でき、受け取れるというサービスだ。

Bento

Bento/ image via Joe Kohen

利用者はプログラムに登録後、スマートフォンで“Hungry”というショートメッセージを送る。すると、利用者の近くにあるレストランのリストが送られてくるので、店と注文したい商品を選んだら、あとは店に行き、店頭で商品を受け取るだけ。受け取り方法は、Bentoを利用せずにオーダーした人と変わらないため、Bentoを通して注文したことが周囲の人に伝わることはない。

アメリカでは、安定的に食料を確保できない人は、そうでない人に比べて2~3倍ほど肥満になりやすいというデータがある。そのため、今回のプログラムで提供される商品は、すべて健康に配慮された栄養のあるメニューとなっている。人々はただ空腹を満たすだけでなく、健康な身体づくりを意識することができる。

そのほか、利用のためにアプリのダウンロードやインターネットを必要としないため、スマートフォンさえあれば利用できる点や、飲食店側も参加のために別途システムを導入する必要がなく、簡単に参加できる点も特徴的だ。Bentoに必要な費用は、すべてパートナーである非営利団体や医療機関、大学による支援によって賄われている。

Bento

Bento/ image via Joe Kohen

飢餓や栄養失調のない世界を作ることを目指して開発されたBento。その目標の最初の一歩として、2020年3月から米国でサービスが開始された。プログラムがスタートした初年度は、米国の7都市で12万食以上の食事が提供され、Fast Company誌の「World Changing Ideas」の一つにも選ばれるなど、注目されている。ほかの国や地域でも真似できる仕組みであるため、今後取り組みが世界中に広がることも期待される。

人々のお腹を満たすことはすべての人が生きる最低限必要なこと。だが同時に、人々の「心のウェルビーイング」を守ることも大切──そんなことを改めて感じさせられる取り組みではないだろうか。

※1 USDA Report: Household Food Security in the United States in 2020

【参照サイト】Bento
【参照サイト】Not Impossible Labsle
【参照サイト】World Changing Ideas

Edited by Tomoko Ito

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