捨てられた貝殻をインテリア雑貨に。韓国とイギリスのアートデュオ「Studio newtab-22」

Browse By

私たちが口にしているカキやムール貝などの貝類。それらの貝殻のゆくえをご存じだろうか。

日本の漁業や養殖業などで廃棄される貝殻の量は、年間およそ14万トン(※1)。中国や台湾、韓国などのアジア諸国でもカキ殻の廃棄は問題視されており、カキ1キログラムにつき、およそ370~700グラムの廃棄物が出ているという(※2)

オイスター

カキの殻

こういった貝殻を廃棄するためにはコストがかかる。そのため、大半が海岸や砂浜にそのまま放置され、悪臭を放つ貝殻の山になったり、ごみと共に埋め立て地へ運ばれたりしている現状がある。

そんな貝殻だが、実はその90%以上が、炭酸カルシウムで構成されている。石灰岩に含まれる炭酸カルシウムと似た成分を含む貝殻は、貴重なバイオマテリアルとして知られ、従来その多くが、肥料として再利用されてきた。

そんな貝殻を新たな方法で活用することを思いついたのが、ロンドンとソウルを拠点に活動するデザイナーデュオ「Studio newtab-22」のHyein ChoiさんとJihee Moonさんだ。二人は、貝殻の「素材」としての可能性に目を付け、廃棄された貝殻をアートやインテリア製品にアップサイクルする「Sea Stone Project」を立ち上げた。

new-tab22

new-tab22

貝殻がインテリアに生まれ変わる、そのプロセスは以下の通りだ。まずは、漁業など水産業の現場から廃棄される貝殻を集め、それを加工して粉砕し、パウダー状にする。それらを鉱物、砂、天然バインダーと混ぜ合わせることで、石のように固い素材を作り出す。この過程によって、貝殻の素材が持つ可能性が最大限に引き出され、強固で美しい質感の素材が生み出されているという。

さらに、製造プロセスでは熱や電気の使用や化学処理をできるだけ避け、持続可能かつ安価に提供できるよう努めている。環境と経済のサステナビリティを追求し、現在はすべての製作工程が手作業で行われているそう。

newtab-22

newtab-22

貝殻からできたこの素材から作られるのは、小型の装飾タイルや、鏡、壁面装飾品などのインテリア雑貨やアート作品など。天然由来の素材からできていながらスタイリッシュで美しいデザインのそれらは、オフィス、寝室、リビング、デスクなど、あらゆるシーンで活躍しそうだ。

sea-stone

Sea Stone Table Mirror

「価値を見落とされている天然素材の魅力的な特性をデザインの力で製品として現代の生活に取り入れることで、社会にサステナビリティを批判的に提案したいと考えています……」

そんな彼女たちの想いから生まれた美しい製品は、私たちが自然の豊かさと美しさに気付くきっかけを与えてくれているのだろう。

※1 令和2年度(2020年度) 水産系廃棄物発生量等調査(令和元年度発生分)
※2 Recycling of seashell waste in concrete: A review

【参照サイト】newtab-22

Edited by Tomoko Ito

FacebookTwitter