政治から映画、ゲームまで。ジェンダー平等を本気で実現する国、フィンランド

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ジェンダー平等の取り組みにおいて、世界ランキング153ヵ国中2位に輝くフィンランド(※1)。2019年から首相に女性が就任し、大臣職の女性の割合も「37.5%」から「50%」に増加。ジェンダー平等の分野で、世界のリーダーシップをとっているといえる国だ。

一体、世界2位の国ではどのような取り組みが行われているのか。本記事では、フィンランドの政府と国内の文化における、女性のエンパワーメント施策についてまとめてみた。

フィンランドの女性たち

性による格差の撤廃を行う政府

フィンランド政府は、1980年代からジェンダー問題に長く取り組んできた歴史がある。1995年に平等法が出され、憲法や、ジェンダー平等のための行動計画の中でも「ジェンダー平等は、社会活動、労働、賃金、雇用において促進されるべし」と明記され、すべての行政単位の課題であると述べられた。

そして2003年には、ジェンダー平等に対する国としての方向性が体系化され、政府の発表した「ジェンダー平等のための行動計画 2004-2007」には、100を超えるプロジェクトが創出された。

その後2015年には、​​法の適用範囲は拡大され、教育機関やNGOでも商品やサービスの提供面でのジェンダー差別を定義。フィンランド当局・教育提供者・雇用主は、計画、評価、割当など、すべての取り組みにおけるジェンダー平等推進を義務付けている。

コンプライアンス違反を行う企業や団体に対し、罰金を科す可能性についても触れられた。これらの平等法の施行は、監視するメカニズムが構築され、 社会福祉保健省などの機関がジェンダー平等に責任を負い、関連する政策の実施を調整している。

他にも、フィンランドでは国会議員のための意識向上アクションと、ジェンダー平等を実現するための訓練の実施が戦略予算に組み込まれるなど、本気度がうかがえる。

Image via Facebook

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徹底して平等に取り組むジェンダー先進国フィンランド。独立100周年を記念して立ち上がった企画もある。「The 100 acts for gender equality project」だ。2016年にスタートし、さまざまな組織や関係者と協力して、ジェンダー平等の実現を促進するためのプロジェクトが立ち上がっている。

本企画は、フィンランド女性評議会と男女共同参画評議会によって始まったもので、女性のリーダーシップに焦点を当てたメンタリングプログラムの実施、給与の透明性の向上、テクノロジー部門への女性の参加促進、ジェンダーに基づく差別に反対するキャンペーンなども行われている。

また、インフルエンサーを集めて北欧諸国のフェミニズムについて話し合うイベントやスポーツにおける平等について話し合うイベント、主要メディアで表現について話し合うイベント、数百枚の写真を使用して、性別による影響の評価などを行うプロジェクトも行っている。

メディアやゲームなど、日常からバイアスを無くす取り組み

また、文化におけるジェンダー平等についても取り組まれている。言葉の使い方や男女比など、メディアの情報の中に埋め込まれた性差の影響も一部の国で問題視されているなか、フィンランドのアアルト大学とテレビや映画業界による合同アクションプロジェクトもスタートしている。プロジェクトでは、雇用機会、賃金での平等性に取り組んでおり、女性監督の映画数が増えている。

また、フィンランド最大のゲーム会社とともに、男女平等の観点からゲームの世界を見ることに挑戦するプロジェクト「Gender in Play」もスタートした。

Gender in Play

Gender in Play

このGender in Playは、法務省が資金提供し、性別の役割と世界観を多様化、ゲーム内の女性に対する暴力を減らすことを目的に立ちあがった。研究データに基づきゲームにおけるジェンダーのステレオタイプと、ジェンダーに基づく暴力について議論するイベントなども実施している。

グローバルな協働でジェンダー平等を実現

さらに、グローバルパートナーシップによる取り組みも始まっている。外務省と進めている多様性に配慮したアルゴリズムを構築するプロジェクト「Tasa-arvon algoritmi -kampanja」だ。フィンランド政府の他に、UN Women(国連女性機関)、フランス政府、メキシコ政府が参加している。

キャンペーンでは、以下の4つに取り組んでいる。

  1. デジタルスキルとテクノロジーへのアクセスにおける性差の是正
  2. 女性や女児のニーズを汲んだテクノロジーの促進
  3. テクノロジーとイノベーションにおける女性と女児の参加
  4. サイバー暴力への対応

日本でジェンダー平等というと、雇用機会と貧困、管理職の割合などの話題に集中している。フィンランドの取り組みにある通り、政府や日常的に触れる情報(メディア)、国際的なパートナーシップなど、できることは他にもたくさんありそうだ。

※1 世界経済フォーラムが毎年公表している、男女格差指数を掲載したレポート「Global Gender Gap Report(2021)」
【参照サイト】The 100 acts for gender equality project
【参照サイト】Gender in Play プロジェクト
【参照サイト】男女共同参画諮問委員会(Tane)
【参照サイト】Finland: Combating violence against women
【参照サイト】フィンランド推進委員会
Edited by Kimika

寄稿者プロフィール:松尾沙織(まつお・さおり)

ライター・ファシリテーター。震災をきっかけに社会の持続可能性に疑問を持ったことから、現在はフリーランスのライターとしてさまざまなメディアで「SDGs」や「サステナビリティ」を紹介する記事を執筆。SDGsグループ「ACT SDGs」立ち上げる他、登壇、SDGs講座コーディネートも行う。また「パワーシフトアンバサダー」プロジェクトを立ち上げ、気候変動やエネルギーの問題やアクションを広める活動もしている。

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