オンライン上で開催された、とあるショートフィルムフェスティバル。風景、スポーツ、猫が遊ぶ様子、どの受賞作品を見ても、非常に短くシンプルな作りで、画質は一昔前のように悪い。説明欄に「最低品質(240p)で視聴することをオススメします」と書かれた作品まである。
Second Annual Small File Media Festival 2021 from Small FIle on Vimeo.
この一風変わったフィルムフェスティバルの名前は「Small File Media Festival」。名前の通り、いかに「小さく・軽い」映像作品を作ることができるかを競うイベントだ。カナダ・バンクーバーにあるサイモンフレイザー大学が考案し、2020年、2021年と連続で開催された。
フェスティバルに提出できる動画作品の条件は、5メガバイト以下。ページ数の少ないPDFファイルくらいの大きさである。また、動画のエンコード(=処理。映像データを圧縮・変換する)にかかる時間を記録し、運営に開示しなくてはならない。必然的に、動画は1分から最長でも5分ほどの長さになる。
なぜ、そこまで作品の小ささにこだわるのか。その背景には、現代の動画ストリーミングサービスによる環境負荷があった。サイモンフレイザー大学は、世界のデータセンターおよび私たちが日々使っているPCやスマートフォンなどのデバイスの多くが化石燃料由来のエネルギーを動力源としており、ストリーミングサービスが世界の温室効果ガス排出量の1%を占めている、とした研究を発表している(※1)。
イベントのWebサイトでは、100を超える応募の中から選ばれた作品たちが見られる。「プログラマーが選ぶ最優秀賞」「最も環境負荷が低いで賞」「ストーリーが最高で賞」など、さまざまな視点で選ばれた作品たちはどれも非常にシンプルなものばかり。開会式から閉会式まで、イベント期間中のあらゆる催しの様子もオンラインで追体験できるようになっている。
もはや、壮大な映像や音楽を使って面白い作品が作れるのはアタリマエ。時代は、いかに「小さく軽い」作品が作れるか――。そんなことを思わせてくれる、世界一ミニマルな映画祭の今後の展開に期待したい。
【参照サイト】Second Annual Small File Media Festival
【参照サイト】School for the contemporary arts – SMALL FILE MEDIA FESTIVAL
【参照サイト】TACKLING THE CARBON FOOTPRINT OF STREAMING MEDIA
【関連記事】デジタル・サステナビリティ