情報統制下のロシアで「宝くじの当選番号」に戦争のリアルを忍ばせるキャンペーン

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ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアでは現在、政府による強力な情報規制が行われている。政府の正当性を揺るがすような情報を排除し、支持率を維持するためだ。現在に至るまでに、国内最大の独立系メディアが閉鎖された他、FacebookなどのSNSや、国外のニュースサイトへのアクセスも遮断され、ロシア国内では侵攻に関する正しい情報を得ることが非常に難しくなっている。

そんななか、報道の自由に取り組む国際NGO「国境なき記者団」が、ロシア国民に真実を伝えるためのユニークな取り組みを開始した。それは、宝くじの当選番号を、国民が独立系ジャーナリストによる情報にたどり着くためのコードとして利用するというものだ。

ロシアの法律では、政府は自らの意のままに、Twitterなどのプラットフォーム上に存在するアカウントの削除指示ができることになっている。そのため、これまで多くの独立系ジャーナリストのアカウントが削除されてきた。ジャーナリストたちは新たなアカウントを作ることもできるが、その場合、フォロワーもリセットされた状態になるため、人々が彼らの新たなアカウントにたどり着くのは難しい。

そこで国境なき記者団は、「The Truth Wins: Russia」と題した、宝くじの当選番号をIDに埋め込んだTwitterアカウントを作成した。これにより国民は、最新の当選番号を検索窓に入力するだけで、記者団のアカウントを発見できるのだ。

宝くじの当選番号は週ごとに更新されるため、例えアカウントが政府によって削除されても、記者団は新たな当選番号で新たなアカウントを作り直すことができる。宝くじの当選番号はその都度、新聞やテレビを通じて広く国民に知らされるため、国民はいつでも最新のアカウントにたどり着くことができるのである。

また、戦争に関する言葉のほとんどが政府による検索ブロックを受けている一方で、宝くじは国営事業であるため、その当選番号が検閲の対象になることがない。さらには、当選番号は国家の予算を使って、国営メディアで大々的に宣伝される。いわば、政府のお金を使って政府と戦うことができる秀逸な仕組みだ。同様の取り組みは、トルコやブラジルなど、ロシアと同じく情報規制が厳しい国でも行われている。

最近ではウクライナのキーウを拠点とするコンテンツプラットフォームが、“The truth about Russia’s war in Ukraine(ロシアによるウクライナ戦争の真実)“というフォトライブラリを公開するなど、ますます報道の自由の重要性が高まっている。宝くじというまさかのアイデアで国民に真実を知らせる取り組みの効果に期待だ。

【参照サイト】Turning the lottery numbers into an access code for the truth
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Edited by Kimika

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