ごみでCO2を回収。気候変動、プラスチック問題の同時解決なるか

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プラスチックごみとCO2排出量の増加は、世界が直面する喫緊の課題だ。国連環境計画(UNEP)によると、世界のプラスチックごみの排出量は年間約3億トン(※1)。また、国際エネルギー機関(IEA)によると、2021年のCO2排出量は363億トンで、過去最高を記録したという(※2)

「両方の課題を解決するために、プラスチックごみを使ってCO2を回収すればいいのではないか」と考えたのが、米ライス大学の研究チームだ。同大学は2022年4月、プラスチックごみを熱分解して作った粒子の、ナノメートルサイズの穴にCO2を閉じ込めることができたと発表した。

Image via Rice University

Image via Rice University

粒子を作るには、プラスチックを粉末状にして酢酸カリウムと混ぜ、600度で45分間加熱。このとき、小さい穴こと細孔のサイズが約0.7ナノメートルになるようにする。これ以上高温で加熱すると、細孔が大きくなりすぎてしまうという。

各粒子は室温で、自身の重さの18%に相当するCO2を回収できる。さらに、粒子を約75度で加熱するとCO2が放出され、細孔の約90%が再び開くため、粒子を再利用することが可能だ。放出されたCO2は、建材や燃料に再利用できる可能性がある。

他のメリットとして、ポリプロピレンやポリエチレンなど、ケミカルリサイクルがしにくいプラスチックが特に、CO2の回収に向いていることが挙げられる。また、熱分解をしたときに生成されるワックスは、洗剤や潤滑剤に使うことができる。

研究チームによると、このプラスチック由来の物質を発電所の排気筒などに取り付けることで、大気中に放出されるCO2を減らすことができるそうだ。排ガスから1トンのCO2を回収するのにかかる費用は、21ドル(約2,600円)と推定されている。

同研究は非常にミクロな世界の話で、普段「~トンのCO2を排出」といったスケールの大きい話を聞いている人は、不思議な感覚を覚えるのではないだろうか。CO2分子の大きさは、わずか0.33ナノメートル。そんな小さな物質が、気候変動という大きな問題の原因になっているのだ。

※1 Visual Feature | Beat Plastic Pollution
※2 Global CO2 emissions rebounded to their highest level in history in 2021 – News – IEA
【参照サイト】Treated plastic waste good at grabbing carbon dioxide | Rice News | News and Media Relations | Rice University
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