今日、世界中であっと驚く原料を使ったマテリアルが誕生している。今回紹介するのは、イタリアのバイオデザイン研究者シンツィア・フェラーリが、プロジェクト「CyanoFabbrica」において発表した、バクテリア(菌類)でできたサングラスだ。
このサングラスには、光合成を行う単細胞生物、シアノバクテリア(藍藻)が使われている。シアノバクテリアは、地球上のあちこちに多様な種が生息しているバクテリアの一種だ。今回のプロジェクトには、バイオミネライゼーションという生物の歯や骨などの硬い組織を作り出す力をもつ種が使われている。
眼鏡のフレームとグラスに使われているバクテリアは、酸素と化学反応を起こし、独自の構造を作り出しながら成長する。特徴的で目を引くサングラスは、顕微鏡で観察したバクテリアの成長パターンとフェラーリ氏のアイデアを融合させ、魅力的なフォルムにデザインされた。バクテリアの生きたシステムから生み出されるその曲線的な形は、不規則で、とても愛嬌がある。バクテリアの成長に任せたデザインは、この世に一つとして同じものはないのだという。
また、バクテリアは光合成によって常に増殖しているため、製品はそのライフサイクルが終わった後も、次のサングラスの原料として使用することが可能だ。
シアノバクテリアが使われているのはその土台だけではない。レンズの部分の着色には、シアノバクテリア由来の顔料であるフィコシアニンが使われている。鮮やかな青や落ち着いたアッシュグリーンなど、身に着けるファッションによってチョイスする色を変えることもできるだろう。
ファッション業界では、天然由来の素材を使用するメーカー・ブランドが増えてきているものの、その製造過程に環境負荷が大きくかかっている状態が続いているケースもある。製品を作る際のプロセスと、製品の最後、そして製品の次の形まで考えて総合的にデザインすることが、今後のものづくりで大切な姿勢になってくるだろう。
【参照サイト】CINZIA FERRARI
【参照サイト】Take a peak at these futuristic sunglasses made of bacteria
【参照サイト】Paolo Bombelli (Postdoctoral Researcher)
【参照サイト】名古屋大学大学院生命農学研究科ゲノム情報機能学研究分野研究材料の紹介:シアノバクテリア
【参照サイト】東京農業大学教員コラム シアノバクテリアと未来を描く
【関連記事】プラごみが「バニラの香料」に。バクテリアを使った英の研究
Edited by Megumi