世界の大都市の90パーセントは沿岸部に集中しており、将来の海面上昇により、沿岸地域に住む何百万もの人々が深刻な影響を受けると予測されている。
そんな中、気候変動による海面上昇の危機にさらされている沿岸都市の一つである釜山で「まち自体を水面に浮かべる」という大胆な発想のイノベーションが起こった。世界初の水上都市「OCEANIX Busan」が2025年までに韓国・釜山に完成するとして、設計内容が公開されたのだ。
同プロジェクトは、国連人間居住計画の支援を受け、ニューヨークに本社を持つ持続可能な海洋開発を目指す企業、OCEANIXが開発に取り組んでいる。OCEANIX Busanの広さは6.3ヘクタールあり、1万2,000人の市民と観光客のコミュニティからスタートし、将来的には10万人が住める「まち」になりうるという。
相互に連結されたプラットフォームと呼ばれる構造の上に、木材や竹など軽量の自然素材を使用した、5階建てほどの建物が立ち並ぶ。プラットフォームは、その目的別に「居住」「宿泊」「研究」と大きく3つに分かれ、それぞれのプラットフォームを行き来することができる。
宿泊プラットフォームにはハーバービューの客室やオーガニックレストランのある宿泊施設があり、研究プラットフォームは、コワーキングスペースや持続可能な海洋研究のハブとして機能。居住プラットフォームは、地元の食材を取り扱うお店や雑貨店、書店などが集まる。釜山の豊かな文化から遊離せず、有機的に拡張させていくことがポイントになっている。
興味深いのは、持続可能なシステムをまちづくりに取り入れている点だ。OCEANIX Busanは、「ゼロエミッションと循環システム」「クローズドループウォーターシステム」「食料生産」「ネット・ゼロ・エネルギー」「革新的なモビリティ」「沿岸生息地の再生」という6つのシステムで構成されている。
例えば、海上に浮かぶ太陽光パネルによってプラットフォームで使用するエネルギーを100パーセント生産。水を独自に処理し、補給も可能なシステムも備えている。人々の移動は電気自動車または徒歩や自転車となっており、CO2排出を削減。食糧生産に関しては、住民が共同で使える農場や温室などの都市型農業が備えられており、プラットフォームの下部にはホタテやコンブを育てるスペースもある。
都市の繁栄は、水との共生抜きにはありえない。釜山の「水上都市」は、自然と共生する新たな街のあり方を教えてくれている。
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【参照サイト】oceanix公式ホームページ
【参照サイト】Sustainable Floating Cities Can Offer Solutions to Climate Change Threats Facing Urban Areas, Deputy Secretary-General Tells First High-Level Meeting
Edited by Erika Tomiyama