国連が注目する「海に浮かぶサステナブル都市」構想。沿岸都市が抱える人口集中と気候変動に挑む

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現在、世界人口の55%が都市部に住んでおり、2050年にはその数値は68%に達することが予測されている。2030年には人口1,000万人以上の都市が43都市に達し、2050年にはそのうち90%が海面上昇の影響を受けることが予測されるなど、都市部の人口集中と気候変動による影響は大きな課題だ。

このような現状に対して、人口過密の解消と環境保全を目的に、国連は「海上に浮かぶサステナブル都市構想」を本格的に検討し始めている。「人間による社会的、環境的に良好なコミュニティの実現」を目指す「国連人間居住計画(ハビタット)」が主導する会議では、建築家、投資家、研究者、政府関係者などの参加者が集まる。

ここでは現在の沿岸都市が抱える人口密集、海面上昇、台風被害、生態系破壊、資源消費を海上都市の実現によって解決できる可能性について議論されている。海上都市の最大の目的は、人口が密集して限界を迎えそうな沿岸都市に代わって住める都市を新しく作り出すことだ。

OCEANIX/BIG-Bjarke Ingels Group.

OCEANIX/BIG-Bjarke Ingels Group.

構想では、海上都市は六角形の人工的な島を最大6つつなげて作るという。それぞれの島は海上に浮かぶように海底とつながれており、島の上には住宅、職場、娯楽施設や宗教施設など生活に必要な機能を備わっている。6つの島を連結させることで、最大10,000人が生活できる都市を形成できる仕組みだ。

海上都市内ではフェリーで移動したり、ドローンを使って物資を運搬するなど、移動手段も確保する。また、都市全体で太陽光、風力発電、波力発電などの再生可能エネルギーで消費エネルギーをすべて賄い、雨水の活用や生活用水の循環、地産地消によってゼロウェイストの環境を作るなど、サステナブルな住環境を実現する。沿岸都市の人口増加を解決しつつ持続可能性が高い都市を実現することで、生活環境の向上と環境保護の両立を実現することが狙いだ。

この構想の実現にあたって最大の技術的課題は「海上都市が津波や台風に耐えられるか」という点だ。現状、津波や台風に耐えられる海上の施設は石油やガスの海上採掘施設しか前例がないため、今後の検討が必要となっている。

もう一点議論が生まれたのが、「海上都市に誰が住むのか?」という点だ。この構想はすでに政府による都市開発のサポートや投資家による大規模な投資が見込まれており、投資家から注目され始めている。そのため、投資のリターンを最大化するために、貧困層を都市部から移住させる形は避けるべきであると議論された。構想の実現によって、若者が新しいライフスタイルを実現する場や、リタイアした高齢者が新しいコミュニティを求めて移住するといった魅力を感じられる都市を目指すようだ。

OCEANIX/BIG-Bjarke Ingels Group.

OCEANIX/BIG-Bjarke Ingels Group.

海上都市の構想は前例がないが、実現すれば都市人口の問題を急速に解決できる可能性がある。国連のプロジェクトでありながら、最先端の技術活用に長けた企業の参加が不可欠だ。参加する企業、国際機関、国家がどのようにビジョンを統一してプロジェクトを進めていくのか、最先端の事例として注目を浴びそうだ。

【参照サイト】Floating Cities Could Ease Global Housing Crunch Says UN
【参照サイト】2018 Revision of World Urbanization Prospects
【参照サイト】Big Unveils A Sustainable Floating City In Response To Rising Sea Levels