ユニリーバの「16歳未満への食品CM中止」から考える、責任あるマーケティング

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英国初の大手消費財メーカー・ユニリーバが2022年4月、テレビなどの従来のメディアチャネルとSNSの両方で、16歳未満の子どもへの食品および飲料のマーケティングと広告をストップする方針を発表した。

方針の適用は、2023年1月1日より行われる。英国では国や自治体によるファストフード広告の規制が行われているが、今回のような企業側からのアプローチの事例は、世界でも珍しい。

ユニリーバの消費者調査によると、子どもは食事以外の時間に1日約12個のお菓子を食べ、大人の5倍の頻度でアイスクリームを食べていることが明らかになったという。お菓子の食べすぎは、成長に必要な栄養の欠乏や虫歯など、子どもに様々な悪影響を及ぼす可能性がある。

こうしたデータを踏まえ、同社は「子どもへの責任あるマーケティングのための原則」として、以下の5点を新たに掲げた。

  • マーケティングやソーシャルメディアコミュニケーションにおいて、16歳未満の子どもをターゲットにしないこと
  • 16歳未満の子どもに関するデータを収集または保存しないこと
  • 16歳未満のインフルエンサーや有名人、または主に16歳未満の子どもにアピールするインフルエンサーや有名人を広告に使わないこと
  • 子どもへのマーケティングに関するユニリーバの立場をインフルエンサーに明確に示し、インフルエンサーコンテンツにおける子どもへの訴求を控えること
  • 特別な要請があった場合の教育キャンペーンへの参加を除き、学校でのブランドや製品の宣伝は引き続き控えること

ユニリーバのアイスクリーム事業のトップであるマット・クローズ氏は、「私たちの目標は、子どもたちへの食品・飲料業界の広告の露出を減らし、代わりに保護者たちをサポートすることだ。そうすることではじめて、子どもではなく保護者が、おやつを選ぶ際の意思決定者になることができる」と語る。

実際、ユニリーバのアイスクリームは、同社の最高栄養基準に基づいて作られたうえで、「責任を持って子ども向けに作られました」という表示が施されているという。保護者が情報に基づいた選択を行えるようにとの配慮からだ。

2022年現在、子どもたちが初めてスマートフォンを手にする年齢は、平均して12~13歳だ。子どもたちはスマートフォンを通じて、インスタグラムやYouTubeなど様々なソーシャルメディアに触れ、情報を得るようになるが、そのなかには無意識のうちに不健康な食生活を訴求されるような広告も含まれている。

メディアが私たちの心理や購買・生活習慣に与える影響力は計り知れないが、子どもは大人に比べてリテラシーが不十分であることを考えると、子どもがメディアから受ける影響は絶大だと言えるだろう。

今回のユニリーバの事例を皮切りに、企業が社会的な責任を鑑み、何らかの自主規制を行う流れが加速するかどうか、これからも動向を見守りたい。

【参照サイト】Championing no food marketing to under-16s | Unilever
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Edited by Kimika

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