海洋生態系を回復させる埋葬?遺灰とカキ殻でつくる人工岩礁

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深刻化する気候危機。その原因には、私たち人間による日々の活動がある。生活や産業活動のなかで起こるCO2の排出などが分かりやすいものとして想像されるだろう。しかし、実は人が「生きている」間だけでなく、人が「死ぬ」ときにも、私たちは地球環境を汚染しているという。

人が亡くなる際に行われる「埋葬」は、実は環境に大きな負荷をかけている。具体的には、墓地の場所確保のための森林伐採、防腐処理のための過剰な汚染物質の使用による土壌や地下水の汚染、感染症発生のリスクなどがあるほか、遺体を火葬するごとに、約400キログラムのCO2が排出されているという。

そんな「埋葬」をよりサステナブルなものにしながら、かつ、環境も回復させるというユニークな解決策が誕生した。「人の遺灰と廃棄されるカキの貝殻の粉末から人工の岩礁をつくる」というアイデアだ。

Resting Reef

Resting Reef

プロジェクトを考案したのは、英国ロンドン王立美術大学の学生、ルイーゼ・レンボルク・スカージェム氏とアウラ・エレーナ・ムリロ・ペレズ氏。2人は、「埋葬の新たなあり方を提案すること」と「海洋生物の生態系を回復させること」を目的にプロジェクトを立ち上げた。

人の遺灰とカキ殻の粉を混ぜて化合物にし、3Dプリンターを使って岩礁をつくる。それを海中に設置することでCO2を吸収できるという。一つにつき、およそ500万ポンド(約2267トン)のCO2を吸収、水質を改善しながら海中のおよそ16の海洋生物の生存環境を守っているという。

Resting Reef

Resting Reef

今回、カキに焦点があてられたのは、過去100年間で、世界中のカキの生息地の85%が失われ、絶滅の危機に瀕しているからだ。スカージェム氏は、「人々は、サンゴ礁が危機に瀕しているというが、カキの直面する現状はさらに深刻である」と話す。

現時点では試験段階で、人の遺灰の代わりに動物の骨を細かくしたものをカキ殻と混ぜ、できるだけ自然のパターンに近い岩礁をつくっているそうで、カキ殻は食品廃棄物として出されたものが使用されている。

一見接点がなさそうに見える「埋葬」と「海洋生態系」の問題から生まれた『Resting Reef』。「故人を偲ぶ場所を海岸に設ける」ことで、人々が海洋環境に関心を持つきっかけを提供している。今後、ますます多様な弔いのあり方が受け入れられ、広まっていくのかもしれない。

【参照サイト】Resting Reef
【参照サイト】Springwise – 3D-printed aquatic reefs made from cremated remains, written by Katrina Lane
【参照サイト】Fast Company – This student-led startup wants to turn human ashes into oyster reefs, written by Elissaveta M. Brandon
【参照サイト】dezeen – RCA students develop underwater urns that double as oyster reefs, written by Jennifer Hahn

Edited by Tomoko Ito

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