声で救える孤独もある。ロンドンの街で広がった「励まし」掲示板

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コロナ禍で「密」を避ける生活が続いていたとき、人々は孤独に直面した。そして今、あなたは、そしてあなたの大切な人は孤独や孤立に悩んではいないだろうか。孤独はメンタルヘルスに深刻な悪影響を及ぼすと報告されており、世界各地でその改善に取り組む動きがある。

英国ではコロナ禍以前から「孤独」を現代の公衆衛生上の社会問題と認識してきた。2018年には世界初の「孤独問題担当国務大臣(Minister of Loneliness)」を設置し、この問題に取り組んできたのである。

そんな英国では、5月の「メンタルヘルス啓発週間」に、ロンドン市内のいたるところで「声のメッセージ」が溢れた。音声メッセージにアクセスできるステッカーが街中に貼られ、ステッカーのバーコードをスマートフォンでスキャンすれば、英国の有名人たちが収録した「励ましの声」を簡単に聞くことができる。

声の広告

Image via ITV

「声のメッセージ」は、チャリティ団体Mind、YoungMindsとSAMHの支援を受け、放送局ITVと広告代理店Uncommon Creative Studioのタイアップで作成された。このステッカーは、ロンドン市内のバス停、キオスク、ファースト・フード店、パブやコーヒーショップ、タクシーの後部座席、さらには持ち帰り用ピザの箱の上にまで貼られている。研究成果によれば、人間は誰かの声を聞けば、不安やストレスが軽減されるという(※)。このキャンペーンでは、いつでもどこでも気軽に誰かの「声」にアクセスができるのだ。

それだけではない。「声のメッセージ」は「誰かに電話しよう」「手を差し伸べよう」と語りかけ、メッセージを聞いた人々に、友人や知人に実際に声かけをしようと行動を促している。また、ステッカーからアクセスできるウェブサイトには、音声メッセージだけではなく、孤独に悩む人々を支援する詳細なサポートプランも掲載されている。

ピザの箱を開けるときに、バスを待つ時間に、ふと、誰かのことを思って電話をかけてみないか、というわけだ。ステッカーには次のように書かれている。

「孤独を打ち破るために声のメッセージを送ろう」

あなたが気軽に語りかけてみることが、孤独に苦しみ、人知れず悩み悲しんでいる人々の1日や人生を変えるかもしれない。今日はいつもよりちょっと心を開いて、気になるあの人に電話をかけてみてはいかがだろうか。

(※)Effect of Layperson-Delivered, Empathy-Focused Program of Telephone Calls on Loneliness, Depression, and Anxiety Among Adults During the COVID-19 Pandemic
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【参照サイト】ITV Left Little Voice Notes All Over London to Fight LonelinessEncouraging words from the network’s stars
【参照サイト】ITV’s Britain Get Talking Returns with Celebrity Voice Notes Disrupting Everyday Places this Mental Health Awareness Week

Edited by Erika Tomiyama

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