政治家と酒を飲みながら議論できるコペンハーゲンの老舗パブ「Toga Vin & Ølstue」

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「政治家と居酒屋でお酒を飲みながら話をする」

東京や大阪などの都市部で、そうしたことが自分の日常に起こることを想像できる人がどれだけいるだろうか。政治家は自分とは全く違う、遠い存在。そのように考える人が日本には多いように思う。

一方で、デンマークの首都コペンハーゲンには「政治家とお酒を飲みながら話ができるパブ」が存在する。有名な人魚姫の像からもそう遠くない沿岸エリアに佇む、老舗パブ「Toga Vin & Ølstue」だ。歴史から醸し出される味わい深さは確かにあるが、ともすれば通り過ぎてしまいそうな普通の酒場。しかし、ここに政界の重鎮が集う「影のデンマーク議会」のような顔があるのだ。なんとMette Frederiksen首相も顔を出すことがあるという。

夜な夜なビールを酌み交わしながらの自由闊達な議論。パブには、政治家だけではなく労働組合や学生団体、NGO、一般客も出入りしており、この酒場で話されたことはオフレコという不文律があるとパブのオーナーPeter Frederiksen氏はCulture Tripに述べている。バーテンダーとして弁護士や歴史学者なども好んで働いているというから驚きだ。

1920年代には船乗りや娼婦が行き交っていた場所に酒場があったといわれ、1960年代にはヒッピー文化が到来。そして多くの若手政治家のメンターだったJohannesという男が1992年12月4日にこの酒場で働き始めたことが大きな転機となった。

Johannes氏がデンマーク政府の友人を招待すると、あれよあれよという間に人づてに政治関係者が集う場所になった。公の場では硬直しがちな議題でも、お酒を飲んで腹を割って話すことで解りあえることもある。談義が盛り上がるほどお酒がすすみ、お酒がすすむほど議論が深まる。

この政治と市民の距離は、デンマークの国の規模にも関係しているだろう。遊説やテレビで政治家を目にすることはあっても、一緒にお酒を飲みながら議論をするというのは、日本の特に都市部で暮らす大多数の人々にはとても想像できない。日本は北欧諸国より人口が多いことなども一要因として、政治は自分とは無関係のところで動いていることと思っている人が多いような気もする。それは投票率の低さも示唆している。

Toga Vin & Ølstueのように、フラットに政治家と日常的に話ができる場所や機会があれば、政治、つまりは、よりよい社会や環境などについて思考し議論する人も増え、日本の民主主義はきっともう幾分か良くなるのではないだろうか。

政治と有権者の距離の近さが、高い生活水準と幸福度を誇るデンマークの秘密なのかもしれない。

【参照サイト】Toga Vinstue
【参照サイト】Toga Vin and Ølstue: the Bar That’s the Real Home of Danish Politics

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Livhub」からの転載記事となります。

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