あるツイッターユーザーが、フランスのマクドナルドの店内で使用されている再利用可能な容器を「デザインが気に入った(absolutely *loving* the design)」と、写真付きでツイートしたところ、同国のマクロン大統領からリツイートされて驚いたという。
La loi anti-gaspillage, ce n’est pas seulement la fin des pailles en plastique. Observez autour de vous : en France, les changements sont à l'œuvre pour faire évoluer nos modes de consommation et réduire nos déchets. On pousse pour le faire au niveau mondial. Changeons la donne ! https://t.co/sd0YRRv1ko
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) November 20, 2022
マクロン大統領は、「フランスでは、消費パターンを変え、ごみを減らすための変革が進んでいます。みんなで力を合わせてごみを削減しましょう!」
と、ツイッターで自国のごみ対策をアピールし広く協力を求めた。
フランスのファーストフード店内が変わる。繰り返し使える容器が義務化
フランスでは、2023年1月1日から飲食店での使い捨て容器の使用が禁止される。2020年に施行された「循環経済法」 にて2023年以降、店内飲食用には再利用できる食器、カップ、カトラリーの使用が義務付けられているからだ(※1)。
フランス国内のマクドナルドをはじめとしたバーガーキングやKFCなどのファーストフード店は今、それに向けて準備を進めている。マクドナルドでは、ポテトをセラミックの容器で、ドリンクはガラスのコップで提供するとしており、国内の10数店舗で試験的にこれらの容器が導入された。ツイッターではトレードカラーの赤い容器がコレクターに盗まれたり、容器の洗浄を心配したりするコメントも見られたが、おおむね歓迎の声が多かった。
バーガーキングでは、樹脂製の容器でハンバーガー以外の商品を提供する。広報によると、試験的に導入した店舗では、最初は容器の盗難が目立ったが、2か月もするとその数も減ってきたという。KFCでは、ドリンクをマイボトルで購入できるサービスをはじめているが、再利用可能な容器はまだ検討中のようだ。いずれのファーストフード店も、ストローやカップ、包装用紙はプラスチックからリサイクル可能な素材に変更し、ごみは地域の業者と協力しながら分別・リサイクルしているという。
EUが「包装と包装廃棄物に関する指令案」を公表
欧州全体では、どのような動きがあるのだろうか。EUの報告によると、現在欧州では、人口1人当たり年間約180キログラムの包装廃棄物を出しているという。過去10年間でその量は20%増加しており、もし何も対策を取らなければ、2030年には19%の増加、プラスチック包装廃棄物に関しては46%の増加が予想されている(※2)。
2022年11月30日、欧州委員会は「包装と包装廃棄物に関する指令案」を公表した。同案は、包装材のリサイクルや再利用の促進、過剰包装禁止を義務付けるものだ(※3)。この規則案ではEU加盟国に対し、人口1人当たりの包装廃棄物の排出量を、2030年までに2018年比で5%削減することを義務付けている。事業者に対しても、全ての包装材をリサイクル可能な設計にすることや、原材料や再利用などの情報を包装材に表示することなど、さまざまな義務が新たに課されることになる。
この規制案による消費者のメリットとして、再利用可能な包装の選択ができるようになることや、商品の過剰包装の減少、リサイクル表示ラベルが欧州共通となり、わかりやすくなるなどがある。また産業界にとっては、特に地元中小企業にリサイクルに関する新たなビジネスチャンスが生まれるとしている。
筆者は2022年の夏にイギリスからフランスに引っ越してきたのだが、日常で家に持ち込むプラスチック製品や包装材は、イギリスに住んでいた頃よりも少なくなったと感じる。その大きな要因は、スーパーで買う食品の包装がシンプルなことだろう。特に野菜や果物は、基本的に量り売りのところが多く、プラスチック製の個包装はごく限られたものしかない。一方で、リサイクルごみは、紙・プラスチック・缶を全部混ぜて出してもよく、日本の基準から考えるとかなりゆるい。
フランスは、2025年までにプラスチックのリサイクル率100%、2040年までに使い捨てのプラスチック包装の市場投入禁止を目指しているが、2020年のリサイクル率は69%(プラスチックリサイクルとサーマルリサイクルの合計)と、目標達成には最後の頑張りが必要だ(※4)。マクロン大統領も、SNSでフランスのごみ削減PRの機会を狙っているのだろう。
※1 LOI n° 2020-105 du 10 février 2020 relative à la lutte contre le gaspillage et à l’économie circulaire (1)
※2 European Green Deal: Putting an end to wasteful packaging, boosting reuse and recycling
※3 Proposal for a revision of EU legislation on Packaging and Packaging Waste
※4 Plastics – the Facts 2022
【参照サイト】マクドナルド フランス 環境への取り組み
【参照サイト】バーガーキング フランス
【参照サイト】KFCフランス
Edited by Erika Tomiyama