家庭や環境など「生まれ」によって学力や学歴など教育の結果に差が出るといわれる「教育格差」。実は、差が出る時期の一つが、幼児期だといわれている。
米国の著名な研究によれば、高所得者層の子どもほど語彙力が高く、低所得者層の子どもと比較すると、3歳までに3,000万語の差がつくと言われている。しかも、小学校に入学した後もこうした言語能力の格差は維持されていくという(※)。こうして考えると、幼児期の読書習慣や周囲の大人との会話がいかに大切なものか、わかるのではないだろうか。
そんななか、米国をはじめ世界各地で取り組まれているのが、ドリーウッド財団の運営する「イマジネーションライブラリー(想像図書館)」という月に一冊本が自宅に届く図書館のデリバリーサービスだ。
イマジネーションライブラリーは、0歳から5歳までの子どもであれば誰もが、専門家選りすぐりの本を毎月無料でプレゼントしてもらえるサービス。すべて無料のプログラムなので、家庭の収入に関わらず試すことができ、本に親しみが持てなかった家庭やその子どもたちも気軽に読書を始めることができる。
イマジネーションライブラリーは今、米国からカナダ、英国、オーストラリアなど各国に広がりを見せている。開始当初の1995年に年間1,700冊だった郵送冊数も、今や毎月100万冊を超えるというのだ。
本を無料で送る、というシンプルな仕組みの一方で、本の選定にはとても気を遣っている。「ブルーリボン選書委員会」とよばれる幼児教育の専門家集団が、子どものニーズに沿って、イマジネーションライブラリーの書籍を厳しく審査する。イマジネーションライブラリーの持つコンセプトには、イマジネーションとインスピレーション、読書や学習を好むこと、多様性の尊重、自尊心の向上などが含まれている。
こうした観点を持って、さらに発達に沿って選書していく。例えば、1歳児なら明るくカラフルで愛着を育むような本、2・3歳児には文字や数、安全や対立といった観点を含む本、5歳児には就学準備となるような内容やサイエンスの要素のある本など……配慮のもとに厳選した本を用意してくれるのだ。
イマジネーションライブラリーに参加することは、子どもたちは言語能力や数学能力の発達の点で積極的な意義を持つとする研究結果もあるという。
本に親しむ子どもたちが、言葉や文字、文化、そして言語による交流を好きになってくれたら、どんなに素敵だろうか。本を通じて、周囲の大人たちも子どもとともに心温まる時間を過ごせるかもしれない。イマジネーションライブラリーは、今日も多くの人々に大きなギフトを贈り続けているといえるだろう。
※Betty Hart, Todd R. Risley (2003) The Early Catastrophe, The 30 Million Word Gap by Age 3, American educator.
【参照サイト】United Way of Erie County公式ホームページ
【参照サイト】Dollywood Foundation公式ホームページ
Edited by Erika Tomiyama