近いようで遠い国、韓国。1995年には食品廃棄物のリサイクル率が2%だったが、2019年には95%に到達(※1)。文字通り、リサイクル大国となったのだ。そんな韓国から、私たちは何が学べるだろうか。
当連載では、サステナブルな暮らしの応援メディア「Life Hugger」で活動するエコライターの曽我美穂が、海外在住の方に、その土地ならではのゼロウェイストな試みをお聞きしている。今回は、韓国在住の鈴木あゆみさんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストかつ豊かな暮らしのヒントを伺った。
※ 本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Life Hugger」からの転載記事となります。
※ 以下、鈴木あゆみさんの言葉
お店では「容器持参」が広がっている
韓国でも、お店によっては容器持参でテイクアウトができます。上の写真は、近所にあるトッポギ屋さんのテイクアウト。我が家では鍋、容器にシリコンのふたを持っていきます。シリコンのふたは、韓国でも人気があります。
先日、たい焼きもテイクアウトしました。
風邪対策も、できるだけ使い捨てが無いように
我が家では、風邪をひいたら小さい頃から両親にしてもらった方法や友人からのおすすめの方法を、韓国の天然素材を使いながら実践しています。こんな方法です。
- プロポリス(ミツバチが樹木から集めた樹脂に、ミツロウや唾液などの自らの分泌物を混合して生成する物質)を喉に直接2、3滴垂らす
- ユーカリオイルをお湯の入ったコップに3滴垂らして、鼻と口から呼吸する
- 生ニンニク、黒ニンニクの両方を食べる!
- はちみつ、生姜、蓮根粉をお湯で溶かしたものを飲む
- サンファチャ(쌍화차)という韓国の数種類の薬草を煮出したお茶を温めて飲む
どれも容器はガラス製だったり、紙包装だったりするので、限りなくゼロウェイストに近いです。
紙容器に入った「シードキーパー」とは?
韓国ではおなじみの「アラジン」という中古書店の入り口で売られていた、ゼロウェイストな「シードキーパー」という商品。
紙のたまごパックに種と土が入っていて、そのまま家で植物を育てられます。たまごパックを無駄にしないだけでなく、色使いがステキで、プレゼントにもぴったりです。
キムジャンは、みんなでつくればゼロウェイストに?
韓国といえばキムチですよね。1年に1度、11月から2月くらいの間、白菜が多く採れる時期に、韓国では「キムジャン」といって1年分のキムチを漬けこむ伝統行事があります。
今は幼稚園、小学校、市役所などで野外キムチ作りをしたりと、特別なイベントとして扱われることも多いですが、もとは家族親戚やご近所が集まって一緒に大量のキムチを漬けていました。昔に比べればずいぶん減ったといわれていますが、いまでも毎年キムジャンの時期になると、大量のキムチを漬けに行く話題で持ちきりです。
いっぺんに作って、みんなで分けて、持ち帰って食べるので、ごみが出にくく、また集まって行うのでエネルギー消費も少ない上、食品ロス削減にもつながります。
出来立てのキムチを、ゆで豚、生カキ、イカ、お豆腐などと一緒に食べます。キムチを食べて、お酒も飲んで、キムジャンでの労働の疲れをともにねぎらいます。キムジャンを通して、一緒にキムチを作り食べることによって、つながりも生まれます。
私も7年前から毎年、キムジャンを企画、開催しています。SNSをみて連絡をくださった方のところへ出張講座やオンライン講座も行ったりしたこともあります。日本人向けに開催する時は、韓国のキムチのレシピをベースにしながら、日本でも手に入りやすい材料のレシピに代えていて、毎回参加者の方たちに好評です。私のライフワークとなりつつあります。
100%韓国産のミツロウラップ「gwrap」
韓国産天然ミツロウと国産100%の綿布地のみでできた「もう一度使うgwrap(다시 쓰는그랩)」は、韓国に約280か所あるゼロウェイストショップの約8割で売られているミツロウラップです。韓国でいまゼロウェイスト運動の聖地といっても過言でない『アルメン商店』へも開店当初から卸販売を行っています。
作っているのは、加工は私が住む水原(スウォン)に住むキム・ウィジンさん。インスタグラムを通してご近所さんだと知り、私が活動する生協のマーケットでミツロウラップの販売を依頼したことがきっかけで仲良くなった友人です。
ウィジンさんがミツロウラップを作り始めたきっかけは、インドネシアから帰国した友人がみつろうラップを見せてくれたこと。「ミツロウラップは、誰でも簡単に作れるのが魅力なので『かわりに作ってあげる』というイメージで作っています」とのことです。
現在は食品用と生活用品を包む用の2種類を作っており、売れ筋は、30cmX30cmサイズの食品用ミツロウラップと、「gusset」というマチ付きのミツロウ袋だそうです。食品用ミツロウラップは韓国食品医薬品安全処の承認も得ています。
こんな手作りキットも販売しています。
「もともと手作りするのが好きでgwrapを作り、手作り市などで販売していました。それが様々な人たちとの出会いを経て、ビジネスに発展しました。今、慈善事業ではなくビジネスとして運営できていることも、よいと思っています」とウィジンさん。
料理も畑も生ごみコンポストも裁縫も、なんでもセンス良くこなす彼女は、まさにゼロウェイスト生活実践者です。どのお店ならテイクアウトに容器を持っていけるか、なんて情報交換もしています。夫婦の二人三脚で、ミツロウラップのビジネスを展開しているのも素敵です。今後もいろんな活動を一緒にしていきたいです。
※1 South Korea once recycled 2% of its food waste. Now it recycles 95% | World Economic Forum
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