スケートする。スラムが変わる。ウガンダの貧困集落で羽ばたく子供たち

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「危ない、汚い、近寄りがたい。」

そんなアフリカのスラムの印象からかけ離れた、老若男女が集まり賑わうスラムの一角がある。

ウガンダの首都、カンパラには中心地を囲むようにスラム街が複数存在する。街に出れば頻繁にゴミを探して歩き回る子供や道端で寝ている若者に出会う。

カンパラのキチンタレスラムは、幹線道路を抜け赤土のでこぼこ道を下っていった先にある。汚れた排水溝とプレハブの屋根で造られた家が密集した典型的なスラムだ。2万人が暮らすこのスラムでは貧困、失業、HIV-AIDS、ドラッグ中毒といった問題が蔓延している。また、他のスラムと同様に多くの子供が学校に行けない環境にあった。

カンパラのスラム街

ウガンダでは親が学費を払えずお金もない子供が多く存在する。彼らの多くは街を歩き回り、ペットボトルのゴミを集める。ペットボトルのゴミはリサイクル処理場に運ばれ、20kgのペットボトルで約100円を得ることができる。5歳から18歳の子供が1日で収拾できるゴミは40kg。遊び場もない彼らはゴミ拾いから得たわずかなお金で、ご飯より手っ取り早く空腹を紛らわせるシンナーを手に入れる。

彼らはシンナーによる影響で道端に倒れこみ、そこで一晩を過ごしたり、簡単に犯罪に手を染めたりするようになる。こうした子供たちは日常的に警察に捕まり、小学生が投獄されるということも希ではない。

そんな現状を変えようと立ち上がったのが、ウガンダ人の社会起業家、ムビル氏だ。ムビル氏は南アフリカ人のスケーター、スワート氏に出会ったことをきっかけに、スケートボードの魅力に取り憑かれる。スケートパークの設立を夢見た彼は、海外の友人からの援助を得てキチンタレスケートパークを設立した。2022年7月には、フランス大使館と世界スケートボード連合、Asiplanchaba(女子スケーターを支援するスペインの団体)、FSPIスポーツプロジェクト・ウガンダの援助を受けて拡張工事を開始した。

スケートパーク

拡張工事には多くの市民が協力し、Asiplanchabaのトリロ氏は「スケートボードは生涯スポーツであるとともにコミュニティを活性化させるものである」と言葉を送った。

キチンタレスケートパークは時間を問わず、老若男女がスケートボードを楽しむ場所だ。それとともに、現地のアーティストに活躍の機会を提供しており、ダンスの大会やスラム出身のアーティストによる木工大工のワークショップも頻繁に開催されている。タイヤやペットボトルキャップといった廃材を利用した遊具、コンドームの利用の啓発を含むウォールアートも飾られ、トリロ氏の発言通り、スケートパークは「人に愛されるスラム」をつくりあげた。

スケートパーク

スケートパーク

また、フランス大使館のフォンテーヌ代表は、「2024年パリオリンピックへの出場を目標として、ウガンダのスケーターをさらに支援し続けることを約束する」と述べた。キチンタレスケートパークでの活動を維持するために、ウガンダスケードボード連合は大会を定期的に開催することを計画している。

スケートパーク

今日もキチンタレスケートパークからは、人々の笑い声が聞こえる。

暮れ方のスケートパークで、練習していた10歳くらいの子供が「僕の居場所はもうストリートではなくて、ここなんだ。」と言っていた。子供たちが貧困やドラッグといった現状から離れ、心の底から楽しむことができるスポーツに可能性があることをこのスケートパークは教えてくれた。

このスケートパークにいるとき、あなたがプロアスリートなのか外国人なのかストリートチルドレンなのかは関係ない。犯罪やゴミで溢れているスラムを、力で抑制するのではなく誰もが楽しめる環境をつくったことで、コミュニティに希望と平和をもたらし活性化させた成功例である。

キチンタレスケートパークから世界へ羽ばたくスラム出身のオリンピック選手が輝く未来もそう遠くないだろう。

【参照サイト】Kitintale Skate park extension and modification commences(Kawowo Sports)
【参照サイト】Uganda Skateboarding Union sets target for Paris 2024 Olympics(Kawowo Sports)

Edited by Yuka Kihara

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