思わず安全運転したくなる?フランス西部に突如現れた「走りにくすぎる道」

2023.10.06

福井香帆

「この道は運転し慣れているから」「急いでいるから」──ついついスピードを出しすぎてしまうことはないだろうか。特に人気が少ない田舎道では、一時停止を怠ったり、少しスピードを上げたりといった光景をよく目にする。こういった少しの気の緩みが大事故につながることは、言わずもがな誰もが理解しているはずだが、急いでいるとついついルールを破ってしまう人も多いのが現状だ。

2023年7月中旬、フランス西部の人口わずか約1,700人のボーネという小さな町で、運転手にとっては、とても複雑で迷惑な道路標示が登場した。場所は、日常的に頻繁に使用される2つの県道の交差点だ。道路に描かれたこの標示は、もはやどこに曲がればよいのか分からないほど、何十もの白い線が絡み合ってあらゆる方向に伸びている。普段この道に慣れているドライバーでも、この標示を目の当たりにすると、驚きのあまり必然的にスピードを落とし慎重に走らざるを得ないだろう。

曲がりくねった道路標識(上)

Image via Bigot Bastien

もともとこの交差点では、時速30km制限の標識がはっきりと示されているにもかかわらず、時速100kmを超えるケースが散見されており、地元当局は、抜本的な対策を講じる必要があると考えていた。そこで、道路を走行するドライバーの反応を確認し、時速30km制限を遵守させるための実験を実施したいと今回の試みを行ったという。

町長のオードリー・ルヴロー氏は、「これは、人々にスピードを落とすよう促すために、視覚的な妨害を与える試みだ」と述べた。同氏によると、実際に道路標示は意図した通りに機能しており、交差点でドライバーの速度を落としているという。

曲がりくねった道路標識(目線1)

Image via Bigot Bastien

このインパクトのある道路標示は、地元住民だけでなく、SNS上でも大きな注目を集めた。しかし、反応はさまざまで、むしろ否定的なものが多いようにも見える。「面白い話題だ」という人もいれば、「返ってパニックになったり、白線に沿って運転しようとしてしまったりして危険ではないか」と心配する人もいる。「エイプリールフールの冗談かと思った」と、税金の使い方を揶揄する声もあれば、「結果は一時的なものであり、ドライバーがこの道の仕掛けを理解してしまえばすぐにスピード違反に戻るだろう」と懐疑的な声もあがる。

曲がりくねった道路標識(目線2)

Image via Bigot Bastien

この方法は、短期的にはうまく機能しているようだが、長期的にスピード減速に効果的なのか、そして、本当に安全なのかを判断するにはまだ時期尚早かもしれない。しかし、「ルールを守りましょう」と単に呼びかけるだけでは、なかなか変わらない人々の意識に、視覚的な仕組みで畳みかけようとするアイデアは、交通安全だけでなく様々な公共分野での問題解決アプローチに新たな視点をもたらしてくれるのではないだろうか。

【参照サイト】A surprising road marking sows trouble to make motorists slow down(Creapills)
【参照サイト】French village resorts to bizarre way of stopping cars from speeding(The Connexion)
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この記事を書いたライター

Kaho Fukui

福井香帆

福井 香帆(ふくい かほ)。佐渡島出身。大学在学中に英国シェフィールド大学にて交換留学。幼少期より大自然に囲まれて育ち、身近な自然の変化を体感する中で環境問題に危機感を持つ。生態系の一部としての人間と非人間のバランスの良い関係性や仕組みを編み直し続けるカタリストになることを目指し探求・実践中。気になるキーワードは、ヴァナキュラーな知恵、伝統文化、微生物、コモニング、アナキズム、多元性、デザイン、建築、農、地域循環。