事故から歩行者を守る「道路アート」とは?アメリカ・カンザスシティの交差点に学ぶ

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多くの人が負傷したり、命を落としたりしている交通事故。米国運輸省道路交通安全局によると、2020年には同国で、6,516人もの歩行者が亡くなったという(※1)

交通安全対策の一つとして、横断歩道の安全確保を図ることが大切だ。横断歩道は歩行者優先であり、ドライバーには横断歩道手前での減速義務や停止義務がある。こういった交通ルールを自然に守る街にするには、どうすればいいだろうか。

2020年、アメリカ・ミズーリ州のカンザスシティに現れたのが、交差点の四隅に描かれた「道路アート」だ。道路に絵を描くことで車道幅が狭まり、車の減速を促す。この取り組みにより、交差点を通る車の平均的な速度が45%も低下したという。

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道路アートは、歩行者に安心感をもたらした。横断歩道の長さが52%も短くなったため、横断時間の短縮につながったのだ。道路アートができたことで、交差点で「とても安心」と感じる歩行者の割合が、23%から63%にまで増加したという。

このプロジェクトの正式名称は「Asphalt Art Initiative(アスファルト・アート・イニシアチブ)」で、非営利団体のブルームバーグ・フィランソロピーズが資金を提供している。取り組みはカンザスシティだけにとどまらず、2022年10月現在、アメリカおよびヨーロッパで約60のプロジェクトを支援している。

他の事例として、2022年にアメリカ・メリーランド州のボルチモアに現れた道路アートも興味深い。小学校の近くにある交差点に絵が描かれ、通行する車の減速を促した。ここでは、歩行者に道を譲る車の割合が、37%から78%にまで増加したという。

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街を彩るアートが、人々を楽しませると同時に交通安全対策にもなるという、意欲的な取り組みだ。あなたが暮らす街で、「ここに道路アートがあったらいいな」と思う場所はあるだろうか。

※1 Pedestrian Safety: Prevent Pedestrian Crashes | NHTSA
【参照サイト】Using art to make a safer intersection | Asphalt Art
【参照サイト】Surrounding a school with safe crossings | Asphalt Art
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