アマゾン生還の子どもたちに見る、コロンビア先住民の世界観

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「地球を大事にしよう」「自然と共に生きよう」。そんな呼びかけを聞くことも増えた一方で、実際に自然と密接に暮らすことやその実感を持って生きることはなかなか難しい。そうした人間と自然の距離感が、今日の環境問題を引き起こしているのかもしれない。

人間は、自然によって生存を脅かされていると同時に、自然によって生かされている。そんな現実を、南米・コロンビアのアマゾンのジャングルで行方不明になっていた、先住民の子ども4人が無事に発見された出来事から学べるのではないか。2023年5月に小型飛行機が墜落した後、1歳から13歳の子どもが約40日間生き延びたという、驚きの出来事だ。

子どもの捜索においては、コロンビア軍や先住民の人々が活躍し、「彼らが子どもを奇跡的に救出した」というトーンの報道も見られる。そんななか、同地域の先住民に詳しい写真家のアレックス・ルフィノ氏は、BBCによるインタビューで「ジャングルは子どもにとって脅威だったという一辺倒な見方が広まっているのではないか」と、懸念を示している。

数ある先住民の目線に立つと、ジャングルの精霊が望んで、子どもがこうした状況に置かれたと考えることもできるという。そして、子どもが元いた場所に安全に戻れるかどうかは、精霊の意思に委ねられる部分がある。子どもが、ジャングルの中で適切なプロセスを踏んでいない状態で、強引にジャングルから連れ出されたのであれば、子どもは今も脅威にさらされている可能性があるというのだ。

また、ジャングルが子どもを守ったという見方もできるという。ルフィノ氏は、例として、木の上にいる猿が食料を地面に落としてくれたり、寝るときに木が守ってくれたり、雨が体を清潔にしたりすることを挙げている。ルフィノ氏も、食料が乏しく危険な動物がいるジャングルは、命取りになりかねない場所であることに言及しているが、「それがジャングルの全てではない」という考えを示している。

子どもが属する先住民族ことウィトト族は、コロンビア先住民族全国組織(Organización Nacional Indígena de Colombia)によると、普段から狩猟をしたり果物を採取したりして生活を営む人々だ。彼らの神話の世界でも、母なる地球や、地・水・空のさまざまな生物と調和しながら行動することが、意識されているという。ジャングルの中を当てもなく彷徨うことについて、現代の日本で生きる私たちとは、違う認識を持っているかもしれない。

その一方で、精霊の意思に委ねられているといった先住民族の世界観は、たとえば映画「千と千尋の神隠し」で描かれている展開と、通じる部分があるようにも感じる。千尋が過ごした不思議な世界にも、さまざまな脅威が存在していたと同時に、千尋を守る力が存在していた。日本でも、神隠しという現象が真実味を帯びていた時代には、人々の自然への向き合い方が、現代と大きく違っていたのではないか。

これからの気候危機時代、私たちが自然の恵みに感謝しながら、自然を恐れる気持ちを持ち続けるにはどうすれば良いか、考えたい。

【参照サイト】“La selva no era la amenaza, la selva los salvó”: ¿cómo pudieron sobrevivir los 4 niños que pasaron 40 días en la Amazonía colombiana? – BBC News Mundo
【参照サイト】ONIC – Muina Murui
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