「気候変動」、どこか漠然とした未来の問題だと捉えてはいないだろうか。
連日報道される「記録的な」大雨、気温、災害は、もはや聞き慣れたワードとなってしまったが、立ち止まって考えてほしい。これは、つまり、未曾有の環境変化が起こっており、私たちは気候危機の時代に生きているということである。
この状況を改善し、解決するためには、私たち一人ひとりがこの問題に関わっていることを認識し、行動に移す必要がある。
そこで、気候変動を身近な問題として捉えられるような、ウィットに富んだプロジェクトがニューヨークで発表された。クリエイティブエージェンシーのMother Goodsが制作した「Bliss Sofa」は、より深刻化する気候危機に備えた、「いかだ」に変身するソファである。
Bliss Sofaは防水素材でできており、搭載された海面インディケーターが「臨界」マークに達すると、安全ないかだに早変わりする。そのオレンジ色は救命胴衣に使われるものと同じ色だ。パドルと緊急用ストロボが装備され、万が一、海面上昇によって洪水が起こっても、ユーザーはソファに座って「心地よく漂い続ける」ことができる。また、付属のフットスツールには、日焼け止めやバーテンダー・キットも収納されている。
この作品は、気候変動に直面して実践的な行動を起こさない政府機関や、気候危機に対する人々の認識のズレを風刺したものである。気候変動を無視し、ただカクテルを飲みながらソファでリラックスしたい人々に向けた痛烈な皮肉である。
このソファは、ニューヨーク・デザイン・ウィークの一環として、Tuleste NYで発表されたものである。10万ドル(約1,430万円)で販売されており、収益の一部はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に寄付され、気候変動で避難を余儀なくされている人々のために役立てられる。
マザー・グッズでは、過去にも社会風刺のきいたデザイン・プロジェクトをいくつか発表している。例えば、ヴァージン・アルパカ・ウールを使用し、宝石の留め具をつけた「贅沢なおむつ」では、生活必需品にかかる「贅沢品税」を揶揄。
また、「いつでも、どこでも、誰からでも撃たれる可能性のあるこの国(アメリカ)で必要な保護と安心を与えてくれます」という説明のなされた「防弾機能のついたファッショナブルなルームウェア」では、アメリカで毎日100件以上発生する銃器による死亡事故を皮肉っていた。
気候変動を私たちに身近な家具と結びつけることで、漠然とした巨大な問題を、自分に関わりを持つものとして改めて考える機会を与えてくれるだろう。Bliss Sofaはコンセプチュアル・デザインの可能性を再提示してくれた。
‘That sounds like a tomorrow problem’
気候変動は「明日の問題」ではない。ソファで海を渡らなければならない日が来ないように、今日が行動を起こすときである。
【参照サイト】Mother, Bliss (公式サイト)
【参照サイト】Réchauffement climatique: un canapé conçu pour faire face… à la montée des eaux
【参照サイト】dezeen ‘Flood-proof Bliss sofa turns into emergency life raft’
【参照サイト】Tuleste Factory, Bliss Sofa & Ottoman Set
【参照サイト】DIAPÉR
【参照サイト】KICKBACK
【参照サイト】United Nations ‘What Is Climate Change?’
【参照サイト】BBC ‘The state of the climate in 2023’
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