フィンランド、地域で使えるギフト券と交換で衣服リサイクル率を5倍へ

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フィンランドの首都ヘルシンキから、車で1時間半ほど北へ行ったところにある地方都市Lahti(ラフティ)。人口12万人ほどの小さなこの都市が最近、市内で出る洋服など繊維製品のごみリサイクル率を5倍に高めたという。一体どのようにして達成したのか。

ラフティ市が立ち上げたのは、廃棄物管理を行う団体Salpakiertoと共同で行うプロジェクト「The Textile Deposit pilot scheme(テキスタイル・デポジット試験制度)」。人々に少しのインセンティブを与えれば、古くなった繊維製品の分別や、より積極的なリサイクルが見込めるのではないか、という仮説を検証した。

2023年6月に試験的に実施した同プロジェクトでは、街に6ヶ所の回収拠点を設けた。地域の人々が古くなった衣料品をボックスに袋一杯入れると、地元のカフェや、プールで使える引換券がもらえる仕組みだ。集積所では、1ヶ所あたり1週間で350キロの繊維製品が回収された。これはプロジェクトが始まる前と比べると5倍の成果なので、報酬の仕組みが効果的だったことがわかる。

繊維製品の回収ボックス

街に置かれた、繊維製品の回収ボックス

回収された繊維製品は、フィンランド最大の繊維加工施設で糸などの繊維に再び加工されるほか、断熱材や防音パネルなどの新製品に使用されるという。このようなマテリアルリサイクルの仕組みは、いま世界で広がる循環経済のモデルの一部といえる。

ラフティ市は、ニュースリリースで「ヨーロッパでは、1人あたり年間11キロの繊維製品が捨てられており、世界では、毎秒トラック1台分の繊維製品が埋め立てや焼却されています。現状このような問題がありますが、ここには同時に経済を転換させる大きなチャンスもあります」と述べる。

「2021欧州グリーン首都賞」を受賞したラフティ市では、2050年までにごみのない都市になるという目標を掲げており、これまでも革新的な取り組みを行ってきた。「CityCAP」というプロジェクトは、エコな交通手段を選択すると報酬がもらえるもの。アプリで登録者の移動手段、距離、所要時間などからCO2排出量を自動で算出し、シェアカーや自転車などでCO2排出量を抑えた人に、バスの割引券や自転車修理の割引クーポンなどといったさまざまな報酬を与える仕組みだ。

他にも同市には、世界で初めてカーボンニュートラルなプロチームになるという目標を宣言したアイスホッケークラブ「Lahti Pelicans」が拠点を置いている。背番号を市の環境に関する数字に置き換えたり、アリーナ内のレストランで地元産の素材を使い、プラスチックフリーの容器に入れて観客に提供したりするなど、気候変動への対策を行っている。

「私たちの未来は循環経済にかかっていますが、リサイクルは消費者だけの責任ではありません。リサイクルをより簡単に、より魅力的なものにするために、国や都市、企業は何ができるかを問いたいです」これはSalpakiertoの開発マネージャー、キッモ・リンネ氏の言葉だ。さまざまなセクターを巻き込み、ポジティブに問題解決しようとする心持ちが、プロジェクトを成功に導いたのではないだろうか。

街に回収ボックスがあり、信頼のできるリサイクルの仕組みがある。しかも、地元で使える引換券までついてくる。そこまでデザインすれば、人々も楽しくリサイクルに参加できるはずだ。ラフティ市のこれからのイノベーションにも期待が高まる。

【参照サイト】Lahti A world first: Lah­ti pi­lots a de­po­sit sys­tem to en­cou­ra­ge re­cyc­ling of tex­ti­le was­te
【参照サイト】Lahti Swap in your old to­wels for pool pas­ses: Re­cyc­ling ra­te goes up 500% as Lah­ti pi­lots an in­cen­ti­ve sys­tem for used tex­ti­les
Edited by Kimika

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