2023年6月12日から2週間、米国史上初の憲法に基づく気候変動裁判がモンタナ州にある街ヘレナで開かれた。そして8月14日、この訴訟を起こした5歳から22歳の16人の若者たちが勝訴した。
モンタナ州は世界でも有数の石炭採掘地。彼らは、州政府が化石燃料採掘の許可を優先することによって地球温暖化を悪化させており、州憲法で保障された「清潔で健康的な環境」に対する権利を裏切っていると主張したのだ。
裁判の中では、14人の青少年原告が証言し、気候変動が身体的・心理的健康に深刻な影響を与えていることを示し、その根拠としてさまざまなデータや報告書を提出した。また、原告たちは、気候変動によって生じる影響が、彼ら自身の生活に及ぼす深刻な問題についても証言した。
その一人であるサリエルさんは、地域の伝統的な食べ物や薬が育つ時期や場所を気候変動が変えてしまい、それらを見つけることや採取することが困難になっていること、その結果として先祖伝来の伝統や文化が失われる可能性について語った。別の原告のバッジさんは猟師であり、彼の家族の生活は、彼が捕まえた肉によって支えられている。気候変動の影響(大気の質の低下、洪水、干ばつなど)は、彼の家族の生活様式を脅かしたと語った。
幼い頃、一生歩けないかもしれないと言われたクレアさんは、何年にもわたる理学療法と家族のサポート、そして彼女自身の強い決意の末、今ではスキーヤーかつランナーとなった。だが、山火事による息苦しさと健康を害する煙により、彼女は屋内で過ごさねばならず、スキーやランニングなど自然の中で過ごすことによる継続的な理学療法を受けられずにいると語った(※)。
一方、州側は何日もかけて答弁すると予想されていたが、結局、わずか3人の証人による1日足らずの証言で幕を閉じた。「モンタナ州で発生する化石燃料からの排出量は、世界全体の排出量に比べれば微々たるもので、モンタナ州の天候や気候に直接影響を与えるものではない」と主張したのだ。最終的な結果は、モンタナ州のキャシー・シーリー判事の手に委ねられた。
原告が異議申し立てをした政策の中には、エネルギー経済が気候変動にどのような影響を与えるかを検討することを禁じたモンタナ環境政策法(MEPA)の条項もあった。今年、モンタナ州議会はこの規定をさらに改正し、州が新エネルギープロジェクトの環境審査で温室効果ガス排出量を考慮することを禁止したのだ。
最終的にこの規定は「違憲である」とシーリー判事は述べた。「MEPAの制限は清潔で健康的な環境に対する原告の権利を侵害する」と明言されたのだ。これにより、モンタナ州の化石燃料の使用を促進する法律の施行が差し止められることになる。
この判決は「モンタナ州、若者、民主主義、そして気候にとって大きな勝利」と評価されている。初めは16人の若者かもしれないが、一つの州が動けば、他の州でも同様の動きにつながる可能性がある。そして、国を超えて大きな社会運動のうねりに発展していくかもしれない。今後の動きにも着目していきたい。
※ Montana Youth Climate Defenders Use State Constitution And Court System To Try To Protect The Environment
【参照サイト】In a Montana courtroom, kids are asking whether states have a responsibility to fight climate change
【参照サイト】First U.S. youth climate change trial kicks off in Montana
【参照サイト】Young Montana residents bring climate change case to court for first time ever
【参照サイト】アングル:気候変動対策加速へ、「照準」変えた若者の抗議活動
【参照サイト】Flathead Beacon
【参照サイト】‘Gamechanger’: judge rules in favor of young activists in US climate trial
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Edited by Megumi