“靴が買えない”ケニアの貧困地域で、子どもと一緒に「成長するシューズ」誕生

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2007年、ケニア。大学卒業後、アメリカ・アイダホからナイロビを訪ねたある青年は、孤児院の子どもたちと、ほこりっぽい道を歩いていた。そのとき、ふと隣にいる少女の足元に目をやり、彼はショックを受ける。少女が履いていたのは、自分の足よりもはるかに小さいサイズの靴。彼女は、その窮屈な靴に足を入れるため、前方に穴をあけ、つま先を飛び出させていたのだ。

──これは、アメリカの非営利団体Because Internationalの創業者・ケントン・リー氏の体験である。この出来事をきっかけに「子どもの足に合わせて拡張する靴」を開発することに決めた彼は、友人たちと6年以上の時間をかけて「The Shoe That Grows(成長する靴)」を完成させた。

「The Shoe That Grows」の特徴は、足の成長に合わせて靴を5段階拡張させられることにある。トップについているフックの位置をずらすことでソールの長さを変え、サイドやかかと部分のベルクロ(面ファスナー)を締めたり緩めたりすることでサイズを調整することができるのだ。

こちらの靴の初期バージョンは、8つのパーツを縫い合わせたり糊付けしたりして作られており、本来はそれが価格の上昇や壊れやすさにつながっていた。そこで、今回の改良版では、一体成型の圧縮ラバーソールを採用することで、シューズの耐久性を向上させた。これによって生産が容易になり、製品自体もより求めやすい価格になったのだ。

また、Because Internationalは2019年から「The Shoe That Grows」の生産をケニアの第二都市・モンバサ、つまり靴が最も必要とされている地域のひとつで行っている。これにより、地域の雇用を生み出し、貧困の削減に臨んでいるのだ。

Becauseシューズ

当たり前のように靴を履いて過ごしていると忘れてしまいがちだが、靴なしで歩くことは、実はとても危険なことである。地面を裸足で歩くことにより、寄生虫による皮膚疾患にかかってしまったり、傷口から感染症になってしまったり、ひどい場合は死に至ったりもする。だが、こうしたリスクは、靴を履くことで防ぐことができるのだ。

子どもたちを様々なリスクから遠ざけ、それぞれの足に合わせて一緒に成長する「The Shoe That Grows」。この靴は、足元から「子どもたちの健やかな成長」を見守ってくれるはずだ。

【参照サイト】Because International
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