自分らしく一歩踏み出すきっかけを。アフリカ布で雇用を生み出し、人を輝かせる「RAHA KENYA」の挑戦

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ダイバーシティの尊重が謳われる昨今、人々が「物」を選ぶ際の基準が多様化している。プロダクトの持つデザイン性や機能性だけでなく、使用されている素材や製作工程、製作者の想い、さらにはブランドのビジョンへの共感など人によってさまざまな基準がある。

今回、個性的な柄で明るい色が特徴のアフリカ布を通じて人々の個性を引き出し、元気づけたいという想いを持つアフリカ発のブランド「RAHA KENYA」を立ち上げた河野理恵さんにお話を伺った。

個性を引き出す力を持つ、アフリカ布との出会い

2018年にパートナーの起業をきっかけにケニアへ移住をした河野さん。日本社会から出た自分に無力感を感じ、アフリカの地で自分の存在意義を見失ってしまったのだという。

「日本で生活しているときは、周りの期待に応えるように日々の生活や仕事で与えられた役割をこなしていれば自分の存在意義がありました。しかし、ケニアに降り立った途端、立場や目的がなくなり、自分はなにもできないことに気づかされました。」

悶々と過ごしていたある日、町中でアフリカ布を身にまとっている女性たちが河野さんの目に留まった。一人ひとりの服に個性があり、生き生きと輝いていた彼女らが印象的だったという。

「笑顔にあふれ、堂々と立ち振る舞う彼女たちが身にまとうアフリカ布に興味を持ちました。実際に自分もオーダーメイドで仕立て上げて着てみると、不思議なことに自然と自信がみなぎり、前向きな気持ちになれました。日本にいるころの自分は『周りにどう思われるか』を基準に服を選んでいましたが、オーダーメイドが当たり前なアフリカの文化を通して、自分の好きな色や柄を選び、個性を表現することで前向きになると実感しました。このアフリカ布との出会いをきっかけに、自分に自信を持つことができたのです。」

アフリカ布

アフリカ布

河野さん自身の原体験から、同じように悩みを抱える人々が自信を持つことで個性を出し、自分らしく一歩踏み出すきっかけを作りたいと2018年12月に「RAHA KENYA」を立ち上げた。

一歩踏み出すきっかけを届けたい

そんな思いで立ち上げたRAHA KENYAのコンセプトは「一歩踏み出すきっかけの」。スワヒリ語で「Be Happy」の意味を持つ「RAHA」をブランド名に入れ、自分たちのアイテムがそばにあることで幸せになれるようにと想いを込めている。

設立から約2年半経つ2021年5月現在は、個性豊かな色と柄を持つアフリカ独特の特徴を活かし、シャツワンピースやパソコンケース、カチューシャなど20種類以上のプロダクトを展開し、アフリカの文化を届けるとともに、手に取る人々に勇気や希望をもたらすプロダクトづくりをしている。

RAHA KENYAのプロダクト(一部)

RAHA KENYAのプロダクト(一部)

RAHA KENYAではコットン100%を使用し 、大量生産するのではなく必要な分だけ、職人さん一人ひとりが丁寧に手作りで製作している。

アフリカ布を使って製作している様子

そして、河野さんのブランドに対するこだわりは日本にいる使い手だけへの想いにとどまらない。

製作者と利用者が互いに顔が見える関係性

アフリカ布を通してポジティブな影響を届けたいという想いを前面に出すRAHA KENYAだが、その裏にはアフリカ現地での雇用を生み出すことや、関わる全てのステークホルダーとの良質な関係構築も目指している。

現在の事業パートナーであるケニア人のウィリアムさんも、自分の身の回りのスラムで生活する人々の雇用を生み出し、助けたいという強い思いのもと事業に取り掛かっている。ケニアの人々にとっても「RAHA KENYA」が欠かせない、存在意義のあるブランドであることも意識して経営されている。

事業を共に運営しているウィリアムさん

事業を共に運営しているウィリアムさん

「ケニアで製作してくれる職人のみなさんは、自分が作ったアイテムを日本に届けられることに働き甲斐を感じてくれています。アフリカの文化が前向きに受け入れられていることももちろんですが、自分たちの文化を通じて遠い日本に住む人にも良いインパクトを与えていることも彼らのやりがいに繋がっているようです。」

そして、ケニアの職人たちの顔が見えるよう、河野さんは製作過程をSNSで発信している。

「どんな職人がどういった想いで目の前にあるアイテムを作っているのかがわかるよう、製作者の顔や名前だけでなく、彼らの想いや将来の夢まで紹介しています。そうすることで、『これはこの前見た○○が作ったものなんだ!』と思っていただき、丁寧に作られている工程や想いを知ることで大切に使っていただくことに繋がっています。」

製作している様子

他にも、現地に住む河野さんだから発信できるアフリカの情報も積極的に配信し、アフリカに対するイメージアップにも努めているのだという。

「ケニアに移住する前にアフリカの情報をインターネットで探しても、治安の悪さや貧困などネガティブな情報ばかりが出てきてしまいアフリカの印象が悪かったのです。しかし、実際に住んでみると良い面も多く、陽気な文化やポジティブなアフリカの情報を積極的に発信しています。ケニアの人たちと交わす日常会話の中で、ハッとさせられる言葉をもらう機会がたくさんあります。例えば、『家族がいるだけで幸せ』ということや、『今を大切にする』ことは、一見当たり前かもしれませんが、日本にいるときの私だと日々の忙しさに追われすぎていて見失っていました。ケニアでは、意識できていなかった多くのことを改めて教えてもらえるので、それらを発信しています。」

こうした発信を積極的に行いながらも、買い手側とのコミュニケーションも密にとっており、「○○さんからこういうリクエストをいただいた」「○○さんが今回はこの商品を買ってくれた」といった、買い手とも顔が見える距離感で、常に同じ目線に立っているブランドとして意識しているのだという。

より持続可能なブランドを目指して

今後の挑戦としては、アイテムを作る際の廃棄を出さないようにしたいと河野さんは語る。

「製作過程のなかでは、 サンプル品や検品の過程で販売できないものが出てしまいます。小さな点が付いているだけで売れないものになってしまうので、その廃棄予備軍となるものを廃棄せずに置いているのですが、新たなカテゴリーを作り、販売を試みようとしています。」

他にも、NGO団体と連携してストリートチルドレンの塗り絵デザインを商品化するプロジェクトなど、個性や特技、感性を活かしながら支援をするといった、相互にポジティブな影響を与えあう新たな支援の形を模索しているのだという。

塗り絵をしている様子

塗り絵をしている様子

プロジェクトに参加したメンバーとの写真日本から遥か1万キロ離れたアフリカ、ケニアでのビジネスは簡単ではない。文化や価値観の違いを受け入れて、お互いの意見をリスペクトする姿勢を常に持ちながら、新たな挑戦を常に模索し続けている河野さんが人々へ向ける謙虚さ、そして一人ひとりの個性や価値観に向き合う柔軟な姿勢がブランドに反映されていた。

編集後記

一歩踏み出す勇気を持ってほしいと語る河野さんは、その『一歩』についてこう話した。

「かつての自分へのメッセージにもなりますが、『一歩を大きくとらえなくてもいい』ということを大切にしてほしいです。例えばアパレル業界の課題を解決するために自分も何かしたいと考えている場合、まずは縫製を学んだり、学校に通いはじめたりと思うかもしれませんが、『今の自分ができることから始めること』が何よりも重要です。小さな一歩の積み重ねを繰り返すことで、自分が実現したいことに徐々に近づくことができます。」

ケニアで右も左もわからなかった河野さんも、アフリカ布を日本に届けたいと思ったときに、何をすればいいか分からなかったという。そこで、アフリカ布が売られているローカルマーケットに行くという一歩を踏み出したことから協力してくれる人と出会い、繋がり、今に至るのだという。

なにかを変えたい、始めたいときは、たとえ小さくとも最初の一歩を踏み出すことで次につながる。そんな勇気をもらいたいあなたもぜひ、「RAHA KENYA」のアフリカ布を手に取ってみてはいかがだろうか。

アフリカ布

【関連サイト】RAHA KENYA
【関連サイト】RAHA KENYAクラウドファンディング (6/13まで)

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