音楽配信のサブスク、映画が見られる配信サイト、新聞の定期購読、食材の月1定額配達。私たちの生活には、昔からさまざまな「サブスク」のサービスが存在している。今回ご紹介するのは、音楽を聴く用のヘッドフォンをサブスクで使うという発想だ。
オランダでヘッドフォンを開発するGerrard Street(ジェラルド・ストリート)社は、「Headphone as a Service(ヘッドフォン・アズ・ア・サービス)」という概念で知られている。同社の製品「Repeat(リピート)」は、「使った分だけ支払う・修理が簡単・永久保証」が特徴だ。一度製品を選び、サブスクを始めてしまえば、途中で何度でも無料で修理をしてくれるシステムである。
部品の一部が壊れた場合にも、そこだけ交換すればいいモジュール設計なので、製品を買い直したりする手間もない。部品の85パーセントは廃棄されずまた別の製品に再利用される。「Repeat」という製品名の通り「繰り返し使える」ことを打ち出しているのだ。
ヘッドフォンのデザインはシンプルで性別を問わず、ワイヤレスのものや、ノイズキャンセリングなど便利な機能が付いたものもある。
Gerrard Street社の取り組みの背景には、大量に捨てられる電子廃棄物(E-waste)への課題意識があった。同社のサイトには「私たちは毎年、500億キロ以上の電気製品を廃棄しています(※1)。せいぜい数年しか使用しないデバイスをどんどん購入するからです。(中略)これは、お金のムダでもあります。年間520億ユーロほどの価値があるものを投棄し、埋め立てていることになるのです(※2)」
とある。
また、従来のヘッドフォンユーザーの声を聞くと、ケーブルの破損などといった簡単な故障で製品全体が使えなくなり、せっかくお金を出したものの価値がなくなってしまうことがあるとわかった。そこで、簡単にパーツを交換するだけの製品を開発し、それを何度でも修理できるモデルを打ち出したのだ。もちろん、寿命を迎えたヘッドフォンや、サブスクをやめて返却されることになったヘッドフォンも、同社が回収してさらにリサイクルするという。
サーキュラーエコノミー(循環経済)を促進するエレンマッカーサー財団でも、モデルケースとして紹介される今回の事例。無駄とフラストレーションを排除するデザインとして、ものづくりの参考になりそうだ。
※1 Read our new E-waste Reports
※2 All that Flickers is Gold: The $62 Billion Opportunity of our Thrown-Away Electronics
【参照サイト】Repeat Audio
【参照サイト】Headphones as a service: Repeat