メタンを爆食いするバクテリア、発見。温室効果ガスを減らす希望になるか

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2023年の夏は1880年に記録が始まって以来、最も暑い夏だった。6月から8月の気温は、1951〜1980年の平均的な夏に比べると1.2℃も高くなった(※1)

この温暖化は主に人為的な温室効果ガスの排出によって引き起こされている。なかでも、メタンは二酸化炭素に比べて温室効果が高く、強力だ。100年単位で見るとその温室効果は二酸化炭素の約30倍、20年単位では約85倍にもなる。メタンの排出が増加し続ければ、気候変動はさらに悪化するだろう。

そんなメタンを「大量に食べて」くれるバクテリアが、ワシントン大学の研究者グループによって発見された。

科学雑誌の米国科学アカデミー紀要(2023年8月21日号)に掲載された研究によると、メチロツビミクロビウム・ブリュリアテンセ5GB1Cと呼ばれるこの菌株は、メタンを大量に吸収する能力があるという。主任研究者のメアリー・E・リドストローム氏はガーディアンでの取材において、「このバクテリア群はメタンを食べ、空気中からメタンを取り除き、一部を持続可能なタンパク源として細胞に変換する」と述べた。

研究者たちは、特に家畜の周りなどで発生する高濃度のメタンを効果的に減少させることができると期待している。国連環境計画(UNEP)の試算によると、人為的なメタン排出をほぼ半減させれば、2050年までに地球温暖化を0.28℃抑えられるという(※2)

Image via Shutterstock

2021年に開催されたCOP26では、EUや米国を含む100カ国以上が、2030年までにメタン排出量を30%削減することを約束し、各国は取り組みを進めている。ただ、現在のところ、ほとんどの研究開発はどのようにこれからの排出量を削減するかに焦点が当てられており、いまこの瞬間も排出されているメタンをどのように取り扱うかについては十分な対策がされていない状況だ。

今回発見された5GB1Cバクテリアは、削減しきれずに排出されてしまったメタンを大量に吸収し、除去してくれるという意味で非常に有望だ。気候目標を達成するためには、メタン排出削減策と除去策の両方が必要だと強調する研究者もいる。

一方、実用化に向けての課題もある。まず、実験室でこのバクテリアを増殖させるためには、既存の装置のメタン処理能力を現状の20倍にしなければならない。リドストローム氏によると、3年から4年以内には試験的プロジェクトを実施できる見込みであり、もし上手くいけば技術的な面での大きな障壁はなさそうだ。だが、大きな問題はその後の規模拡大であり、多額の投資資金と商業化が必要だ。

そのためには、投資家や政治家の支援と、適切なビジネスアプローチはもちろん、クリエイティブな発想が必要かもしれない。以前、IDEAS FOR GOODでは、「メタンガスを食べるバクテリアからできた衣服」を紹介した。あなただったら、どんなアイデアを思いつくだろうか。

※1 NASA Announces Summer 2023 Hottest on Record
※2 Des scientifiques ont découvert une bactérie « mangeuse de méthane »

【参照サイト】ICOP26: US and EU announce global pledge to slash methane
【参照サイト】Bacteria that ‘eat’ methane could slow global heating, study finds
【関連記事】NASAも注目。メタンガスを食べるバクテリアから作る未来の洋服
Edited by Megumi

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