おいしい料理の裏で「燃え尽き症候群」に悩むシェフたち。英米で支援団体が立ち上がった

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レストランやホテルを訪れた際、そこで働く人々のおもてなしによって心が癒される経験はあるだろうか。彼らの思いやり溢れる言葉や行動に、心温まる感動を覚えたことがある人も多いだろう。

しかし、そのおもてなしのプロ達の多くがメンタルヘルスの問題に直面していることを知っているだろうか。レストランやホテル、病院といったホスピタリティ業界で働く5人に4人が重度のストレスやメンタルヘルスの問題を抱えた経験があり、社会全体では4人に1人の割合であることと比べると、非常に高い割合だという(※1)

この問題に立ち向かうのが「The Burnt Chef Project(火傷したシェフのプロジェクト)」というイギリスの非営利団体だ。ホスピタリティ業界を中心に従業員に対してメンタルヘルスサポートするための様々なサービスを提供する。2019年に設立され、これまでに122を超える国のホスピタリティ業界に関わる人々のサポートに携わってきた。

サービスは多岐にわたり、24時間いつでもメンタルヘルスの相談ができる窓口や、ポッドキャスト、社内研修のほか、職場に関するストレスに対処法をまとめたガイドラインなどを提供している。瞑想や呼吸法、日記、目標管理などをサポートするアプリ「Thrive」とも連携し、日常生活における支援にも取り組んでいる。相談窓口は研修を受けたボランティアによって運営され、不安やストレス、孤独感、身体の不調、ハラスメントなどについて、ホスピタリティ業界に携わる人なら誰でも相談することができるのだ。

実際にサービスを利用した人からはこんな声が聞かれるという。

私にとって、キッチンで働く経験というのは決して簡単なものではありませんでした。深い暗闇に落ちてしまい、そこから抜け出すことはできないと感じました。でも、そこに救いの手があったのです。それがまさにThe Burnt Chef Projectでした。

同団体では資金集めとして、物販に加えて、スカイダイビングやサイクリング大会への参加、寄付者自身によるファンドレイジング企画の立ち上げなどを通して、関心を寄せる人々が寄付に参加できる仕組みも整えている。

このようにホスピタリティ業界のメンタルヘルスの課題に取り組む団体は、他にも見られる。アメリカでは「Restaurant After Hours(閉店後のレストラン)」という組織が設立された。この組織ではホスピタリティ業界で暴飲暴食、ハラスメント、薬物乱用、不当な労働条件などが慣習化してしまったことがメンタルヘルスの課題を生んでいると捉え、オンラインコミュニティの運営や職場での啓発用の教材提供などをおこなっている。

日本においても、過重労働などが指摘されメンタルヘルス対策の必要性が高い職種のなかに、外食産業や医療従事者といったホスピタリティ業界が含まれている(※2)。社会全体においてメンタルヘルスが取り上げられ始めているものの、現場における具体的な対応策には至っているかは懐疑的だ。

相談相手が同じ業界出身者だからこそ寄り添うことができる悩みも多いだろう。ときに心のバランスを崩すときがあってもそれを共有し支え合うことができる場づくり、そして働き手のウェルビーイングを尊重した職場づくりが、今まさに必要とされている。

※1 Social Impact Report 2022 SERVING UP THE TOOLS TO END THE STIGMA OF MENTAL HEALTH IN HOSPITALITY|The Burnt Chef Project
※2 事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集 ~いきいきと働きやすい職場づくりに向けて~|厚生労働省

【参照サイト】The Burnt Chef Project
【参照サイト】Restaurant After Hours
【参照サイト】Thrive Mental Wellbeing
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