チリ・アタカマ砂漠「洋服の墓場」のファッションショー。廃棄された服でランウェイを歩く

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南米チリの北部にあるアタカマ砂漠は、満天の星空が美しいことで知られ、チリで最も人気のある観光地の一つになっている。しかし同時に、アタカマ砂漠には使用済みファストファッションの「犠牲地帯」が広がっている。ファッションの墓場と化したこの砂漠の惨状は、宇宙からも見えるほど大規模だ。

アタカマ砂漠の星空。Image via Shutterstock

2024年4月、大量の衣類が廃棄されたアタカマ砂漠のごみの中で、ATACAMA FASHION WEEK 2024と名付けられたファッションショーが開催された。アタカマ砂漠の住人でもあり、非営利組織・Desierto Vestidoの共同設立者アンジェラ・アストゥディージョ氏が、ブラジルの活動団体・Fashion Revolution Brazilと広告代理店・Artplanと手を組んで開催されたこのファッションイベント。彼らは、廃棄物が環境に与える影響への認識を高めることを目的に活動している。

着なくなった衣服はその国のチャリティ・ショップなどに寄付されることもあるが、アメリカ、中国、韓国、イギリスなどで手放された古着の多くが最終的に行きつく先は、チリなどの南半球の国々だ。

国連の最新の統計によれば、チリは世界第3位の古着輸入国で、毎年6万トンもの古着が到着する(※)。到着した古着の中にはタグがついた新品とみられる衣服もある。その一部は中古市場で転売されるが、少なくとも3万9,000トンは売れ残り、チリ北部のアタカマ砂漠に不法投棄されてしまう。

Fashion Revolution Brazilのディレクター、フェルナンダ・シモン氏はThe Guardianのインタビューの中で「北半球で消費された製品が南半球で廃棄されるシステムには、『環境人種差別』と『植民地主義』の要素がある」と話している。

砂漠のファッションショーでは、8人のチリ人モデルが四大元素(地、火、空気、水)をテーマにデザインされたコレクションを着用し、アタカマ砂漠の砂のランウェイを歩いた。コレクションは、ごみ山で発見された服を24時間かけて手作業で裁断し、縫い合わせたものだ。ATACAMA FASHION WEEKのサイト上では、そうした手間や環境負荷を反映した、驚くような「トゥルーコスト(本当の価値)」が提示されている。

サイトに掲載されている「トゥルーコスト」

チリでは、繊維廃棄物を合法的な埋立地に投棄することは、繊維廃棄物が土壌の安定性を損ない、土壌の崩壊や水はけの悪化などを引き起こすため禁止されている。地元当局は砂漠に廃棄物を投棄して捕まった人々に18万ペソ(約3万円)の罰金を科しているものの、それでも投棄は後を絶たないそうだ。

アタカマ砂漠に捨てられている衣服のほとんどはポリエステル製で、分解に200年以上もかかるプラスチック繊維のものだ。廃棄された衣服には石油を原料とする化学繊維が使われているため、分解されず土壌汚染の原因となる。これらの衣類が焼却されると、有毒ガスが発生し、土壌やオゾン層、そして地域住民の健康にもダメージを与える。

ATACAMA FASHION WEEK 2024でモデルたちが見せた殺風景なグレーのシャツや、廃棄物のように重ねられたデニムの切り替えし。それらは、横行する衣料生産による汚染と環境への影響、砂漠の埃に覆われた衣服の山、環境不公正がこの地域に住む人々の生活に与える制約を象徴しているそうだ。

便利な生活の裏側で、大量廃棄による環境汚染が起こり、大量生産工場での低賃金労働に苦しむ人々がいるという現状。そうしたものづくりの背景を知ることで、誰かの明日のアクションが変わるかもしれない。今回のファッションショーは、強烈なビジュアルとともに、廃棄の現実を世界中の人々に突きつけたのではないか。

Used Clothing Textiles; worn clothing and other worn articles
【参照サイト】Atacama Fashion Week
【参照サイト】Castoffs to catwalk: fashion show shines light on vast Chile clothes dump visible from space
【参照サイト】Fashion Revolution Brazil 
【参照サイト】economiacircula
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Edited by Megumi

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