行きすぎた成長第一主義の経済に対し、それに代わる新たな経済の姿を模索する動きが強まっている。こうして成長を過度に追求した経済から脱却しようとする動きは「ポスト成長」とも呼ばれる。
しかし、「経済システムを変えるなんて無理難題だ」と思う人も多いだろう。政治家でもないかぎり、社会の仕組みを変える機会を身近に感じることは難しい。
そんな現状に、光を差す研究が発表された。スウェーデンの研究チームによると、地域の草の根の取り組みを支援することこそ、ポスト成長型経済への移行につながる可能性が高いことが示唆されたという。特に、草の根組織を取りまとめ、組織間のつながりを醸成する中間支援組織の存在も重要であるとのことだ。
この結果から、3つの政策提言として、協同ビジネスモデルを開発すること、組織間の仲介役を強化すること、根本的なビジョンの共有を促進することが挙げられた。
研究対象となったのは、スウェーデン・ヨーテボリにおけるCollaborative economy(コラボラティブエコノミー)の発達。コラボラティブ・エコノミーは「共同経済」という意味であり、シェアリングエコノミーとほぼ同義とされ、伝統的な仲介機関を経由することなくニーズと所有者をマッチングさせるネットワーク型の経済システムを指している(※)。
ヨーテボリではこの取り組みが長らく盛んであった。地域内の草の根組織を取りまとめるグループ・Collaborative Economy Gothenburgや、それら組織とコミュニティガーデンなどを掲載したウェブ上の地図・The Smart Mapが、2016年の時点で作られていたという。こうした草の根組織や地方自治体へのインタビューを通じてデータを集め、ポスト成長型と互換性があるかどうかが調査されたのだ。
調査の結果を見てみると、草の根組織は必ずしもグローバル経済への対抗を掲げて活動しているわけではない。彼らはむしろ、日々の消費のあり方や、地域のフードロスを減らすことなど、地域の暮らしにおいて現行の経済とは異なるモノやサービスのあり方を提案している。それが強固になることで、着実にポスト成長という仕組みにまで近づいていくようだ。
経済システムの転換と聞くと、あまりにも壮大な話だと思うかもしれない。しかし、経済の枠組みを変えていくのは経営層や政治家だけの特権ではない。国際的で大きな経済が課題を抱えているからこそ、今注目したいのは地域レベルでのつながりから生まれる経済の流れではないだろうか。「Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ
)」という捉え方は、あながち綺麗事でもないかもしれない。
※ 都市におけるコラボレーション:シェアリングから「シェアリングエコノミー」へ
【参考文献】David Enarsson, Jennifer B. Hinton, Sara Borgström, 2024, Grassroots initiatives transforming cities toward post-growth futures: Insights from the collaborative economy movement in Gothenburg
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