気候変動は、世界規模でさまざまな変化をもたらしている。近年、日本は猛暑に見舞われ、欧州は熱波の襲来を受けている。湿度が高く、熱波がさらに増える可能性のある地域ではエアコンが欠かせないが、不安定な電力供給や高額な費用の問題もあり、エアコンが設置されていない場所も多い。
たとえばインドネシアでは、年間を通して平均気温が28度前後と高い。しかし、商業施設やオフィスビルにはエアコンが設置されている一方、学校や一般家庭の8割がエアコンのない室内環境にあるのだ。その暑さは耐えがたいものとなっており、人々は日常的に熱ストレスに悩まされているという。
そうした状況への対応策を生み出している企業が、エアコンを使用せず特殊塗料を屋根に塗ることで建物を冷却する「Cool Roofs Indonesia」だ。彼らはBeCoolという特殊塗料を開発した。それに含まれる小さなエナメル粒子は、太陽の紫外線を跳ね返す。BeCoolの塗料には、太陽光を最大84%反射し、建物が吸収した熱の90%を放出するコーティングが施されている。
実際に特殊塗料を施工してみると、ある工業用の建物では室内温度が40℃から29.7℃に低下、小学校では室内温度が36℃から33℃に低下したことが報告された。これまでインドネシアの15都市で、学校や児童養護施設、低価格の集合住宅36棟など約70棟の屋根がBeCoolの技術で施工されている。
インドネシアの他の都市に比べて比較的涼しいジャワ島のバンドンでも、Cool Roofsはその効果を発揮している。CNA Insiderの動画の中で、インドネシアの建築家であるアッザフラ・ダルタマンさんはこのように語った。
BeCoolの施工後は32℃ほどあった事務所の室内温度が25~27℃に下がりました。いい点は、事務所でエアコンを使わずに済むことです。今では、1日中使っていた扇風機も日中の数時間しか使わなくなりました。電気代の節約になっていることは間違いありません。
現在は輸入コスト削減のため、アメリカの企業Millennium Solutionsが製造していた塗料をインドネシア現地で生産している。登録商標は取得済みだ。これにより、独自の生産能力を確立できたCool Roofs Indonesia は、100を超える製造および設置の雇用を創出した。Cool Roofs Indonesiaのチームは、現地生産を拡大することで、雇用機会をさらに増やすことを考えているという。
今後もアジアは熱波でさらに厳しい暑さとなることが予想されている。猛暑は、農業やエネルギー面において人々の暮らしに打撃を与える。それらの問題を緩和するために、Cool Roofsが行ったような低コストで効果的な取り組みは、非常に重要といえるのではないだろうか。
【参照サイト】Why Indonesia is covering its roofs with reflective white paint
【参照サイト】Save money, be cool: Indonesian project shows how ‘cool’ roofs can help Asia beat the heat
【参照サイト】BeCool
【参考動画】Low Tech, Low Cost Solutions To Keeping Cool In Indonesia | Money Mind | Cooling Technology
【関連記事】ヨーロッパを襲う熱波。暑さを乗り越えるまちの工夫とは【欧州通信#03】
Edited by Megumi