16歳の新有権者をサポート。選挙のいろはを教える、ベルギーの「移動式投票ブース」

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2024年は史上稀に見る「選挙イヤー」だ。1年間に計64か国で選挙が実施され、有権者数は地球人口のおよそ半数にもなるという(※1)

同年6月、その「65番目」ともいえる重要な選挙がヨーロッパ各国で行われた。欧州議会選挙である。今回の選挙では、ドイツとベルギーにおいて有権者年齢が18歳から16歳へと引き下げられたことも一つの話題となった(※2)

今回の記事でご紹介するのは、そんな初めて有権者となった16・17歳の若者たちの投票をサポートするためのベルギー・ゲント市の取り組みである。

選挙期間中のゲントに登場した、移動式の「投票ブース」。学校や公園など公共施設を回ったこのブースの見た目はどことなくインスタント証明写真のマシンのようだ。だが、このブースで手に入るのは証明写真ではなく、「投票の知識」である。 

移動式投票ブース

Image via Stad Gent.

カーテンで仕切られた、まるで本番さながらのブースの内部では、今回が初参加となる新有権者へ向けて、投票の仕方をわかりやすく解説する動画を放映。その内容は、所定の筆記具以外での書き込みは禁止、投票用紙への落書きは無効といった基本的な知識から、「投票所内でアイスクリームはこぼさないで」といったユーモアを交えたアドバイスまで様々だ。まるでフライト前に飛行機の座席で見る安全動画のように、投票のいろはを親切に教えてくれる。動画で説明を担当するのは、地元フランダース地方で人気の若者インフルエンサーたちだ。

また、ブース内にはティーンの投票をサポートするサイトにつながるQRコードが設置されている。ウェブサイトの名前は、「’t Is aan u!」。オランダ語で「あなた次第!」だ。

サイトには、「誰に投票するか言うべき?」「試験があっても投票に行くべき?」といった疑問に答える記事や、選挙についてより良く知るための情報誌「electionZINE」のダウンロードリンクなどが掲載されている。

ベルギーにおいて、有権者年齢引き下げによる新規有権者数はおよそ100万人。これは有権者全体の10%にあたる(※3)。未来を担う若者たちが作りたい未来はどんなものだろうか。「自分の欲しい世界」へ向け、自信を持って一票を投じられるように──このブースは、投票所へ向かう彼らの背中をそっと押してくれている。

※1 The Ultimate Election Year:All the Elections Around the World in 2024(TIME)
※2 EU parliamentary election: There will be 16-year-old voters in Germany and Belgium(npr)
※3 Over ‘t Is aan u! Jouw stemt telt, ook al is het de eerste keer!

【参照サイト】Ghent educates teen voters with traveling voting booth(The Mayor.eu)
【参照サイト】Mobile voting booth will make it easy for Ghent teenagers to vote(child in the city)
【参照サイト】Rondreizend stemhokje geeft ‘first voters’ info over verkiezingen
【参照サイト】‘t Is aan u!

Edited by Yuka Kihara

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