ここ数年、「プラネタリーヘルス(地球の健康)」という言葉が注目されている。これは、気候変動による地球環境の変化が私たち一人ひとりの健康に大きな影響を与えることを示す言葉だ。
多くの国で長期的な気候変動対策の変革が求められているが、その実情はプラネタリーヘルスを守るのに十分なのだろうか。韓国では、2010年に初めて「カーボンニュートラル法」が制定され、2030年までにCO2排出量を2018年比で35%削減するという目標が設定された。
しかし、韓国の気候変動活動家たちは、政府の2031年から2049年までの温室効果ガス削減目標とその実施計画は不十分であり、将来世代の環境権を侵害していると主張。2020年3月には、彼らはこの問題を「違憲」として訴訟を起こした。さらに、韓国政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げているにもかかわらず、2031年以降の二酸化炭素排出量を削減する具体的な計画を明示していないという問題も提起された。
2024年8月29日、韓国の最高裁判所は、2030年の政府の目標に非はないとしながらも、現在の気候変動対策は、将来の世代に「過度の負担を強いるもの」だと指摘。結果、韓国政府は2031年以降のより具体的な二酸化炭素削減目標を2026年2月末までに設定し、法を改正するよう命じられた。
全会一致の評決は、4年にわたる法廷闘争に終止符を打つと同時に、アジア初の気候変動訴訟判決として重要な前例となった。また、今回の判決を受けた韓国環境省は、「裁判所の決定を尊重し、今後の措置を誠実に実施する予定である」という声明を発表した。
今回の訴訟の原告となったのは、気候変動ストライキ運動の韓国部門を率いる団体Youth 4 Climate Actionだ。その後、さらに3つの訴訟が統合され、原告数は子どもや10代の若者を含む総勢255人に達した。
原告の一人である12歳のハン・ジェアさんはThe New York Timesの取材に対し、「気候危機は未来の問題ではなく、誰もが直面している現実です。この判決が大きな変化をもたらし、子どもたちが将来、憲法上の訴えを起こす必要がなくなることを願っています」
と話している。
気候変動の深刻な影響が世界中で報じられるにつれ、気候変動は人権や憲法に関連する問題としても受け止められるようにもなった。韓国のこの歴史的な訴訟判決は、他のアジア諸国にも大きな影響を与える可能性がある。
【参照サイト】Action for the Climate Emergency
【参照サイト】Court Orders South Korea to Take Stronger Action on Climate Change
【参照サイト】South Korea’s climate law violates rights of future generations, court rules
【参照サイト】Court orders South Korea to specify plans to cut carbon emissions through 2049
【参照サイト】Neubauer, et al. v. Germany
【参照サイト】気候変動が基本権侵害?…韓国で初の「気候訴訟」5時間マラソン弁論
【参照サイト】韓国政府の気候変動対策は一部「違憲」 アジア初の司法判断
【関連記事】スイスのシニア女性グループが、歴史的勝訴。気候危機への対策不足は「人権侵害」
Edited by Megumi