デンマーク、若者へのエナジードリンク販売禁止を検討。行き過ぎた効率主義に一石を投じるか

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あなたはどんなときに「エナジードリンク」を飲むだろうか。

スポーツの試合や試験前に集中したいとき。それとも、気分を上げたいとき。タイミングは人によってさまざまだろう。

エナジードリンクの広告やインフルエンサーが飲んでいるのを見かける機会も増えた。近年エナジードリンクは「パフォーマンスを高めたいときの飲料」としてブランディングに成功し、SNSやスポーツイベントとも連携することで若者中心に世界で人気を博している。

そんななかデンマークでは、18歳未満の未成年者へのエナジードリンク販売を禁止することが検討されている。主張するのは、子どもの肥満防止や身体的・精神的健康問題の解決に取り組む団体・The Centre for Childhood Healthや、デンマーク消費者評議会・Forbrugerrådet Tænkなどの消費者団体だ。

なぜ、こうした動きが起こっているのだろうか。

問題は、エナジードリンクに含まれる大量のカフェインとその中毒性である。1本(約250ミリグラム)には80ミリグラム以上のカフェインが含まれており、コーヒー1杯(150ミリグラム)に含まれるカフェインとほぼ同じ量だ。一方、コーヒーは一般的にゆっくり1杯ずつ飲むのに対し、エナジードリンクは短時間に何本も飲むことがあり、カフェインの摂取量が増えやすいのだ。

さらに、エナジードリンクを摂取する子どもは、不安やストレス、自殺願望が強いなどの関わりが研究で示唆されてきた。カフェインと砂糖の摂りすぎが睡眠を妨げ、神経系を刺激するのが一因だ。

このようにエナジードリンクへの厳しい視線が注がれているのは、デンマークだけではない。すでにラトビア、リトアニア、ポーランドなどでは年齢制限が導入されている。イギリスでも労働党は16歳未満へのエナジードリンク販売禁止を掲げ、一部のスーパーマーケットは販売の自主規制を始めている。

エナジードリンク

Image via Shutterstock

それでは、日本ではどうだろうか。研究によれば、日本の子どもたちは「運動やスポーツのとき」、「喉が渇いたとき」に「おいしそうだから」といった理由でエナジードリンクに手を伸ばすという。日本国内のコンビニや自販機で買うのは手軽だ(※1)

さらに驚くべきことに、日本の中学生の10%以上が、週1本以上のエナジードリンクを習慣的に飲んでいるという。なかには、数々の身体症状や「寝つきが悪い」「夜中に目覚める」などの症状を訴える子どもたちもいる。エナジードリンクによるカフェインの過剰摂取がカフェイン中毒を引き起こし、のちの薬物依存の「入口」になりうるとする研究もある。日本ではカフェイン中毒により、5年間に110人が救急搬送され3人が亡くなっている(※2)

こうした現状の中でも、日本の向こう5年間のエナジードリンク市場は、さらなる拡大が見込まれている。日本では過労死が大きな社会問題となっており、長時間労働が原因で毎年74万5,000人以上が命を落としている(※3)。そうした労働環境の厳しさや、効率性や生産性を常に求める社会の圧力、テストや評価といった学校でのプレッシャー。社会を見渡すと、大人も子どももエナジードリンクに手が伸びる理由を溢れるほど抱えており、その需要を支えている。こうした飲料は、「即時の満足感」や「迅速な効果」を求める文化を象徴しており、過剰な資本主義の進行を助長している側面もあるかもしれない。

デンマークでは、販売規制の声が上がる一方で、規制まで行うのは個人の自由の侵害で、「過保護な政策」だと批判する声もあり、賛否両論を巻き起こしているという。

さて、1本のエナジードリンク。あなたはどう考えるだろうか。

※1 野井真吾ほか「10~18歳の子どもにおけるエナジードリンクの摂取実態と摂取者の身体症状・生活状況の特徴」学校保健研究 62 (3), 166-177, 2020.
※2 エナジードリンクが「依存症」の入り口に…カフェイン過剰摂取で「命の危険」 子どもも大人も要注意『東京新聞』
※3 日本のエナジードリンク市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年)

【参照サイト】Fødevarestyrelsen公式ホームページ
【参照サイト】Forbrugerrådet Tænk公式ホームページ
【参照サイト】Danish groups call for ban on energy drink sales to protect youngsters
【参照サイト】Chad J. Reissig,a Eric C. Strain,a and Roland R. Griffithsb, Caffeinated Energy Drinks — A Growing Problem, Drug Alcohol Depend. 2009 Jan 1; 99(1-3): 1–10.
【参照サイト】Red Bull公式ホームページ

Edited by Erika Tomiyama

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