泥水を飲み水にするペットボトルキャップが、水不足の地で暮らしを潤す

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大型台風が近づくと、スーパーマーケットからミネラルウォーターが姿を消す。最近は、一人あたりの購入本数を制限する店舗も珍しくないだろう。断水の可能性が高まったとき、多くの人は「水を買っておかなくては」と考える。では、ペットボトルに入った水を購入することもできない状況に至ったら、どうだろうか。

今この瞬間にも、そのような水不足の状況に置かれている国は多い。その一つが、南米のコロンビアだ。コロンビアでは約120万人が安全な飲み水を十分に確保できておらず、これは同国人口の25%に当たる。その中でも、地方に住む約37万人以上の人々が特に厳しい状況に置かれているという。

こうした現状を改善するために、インフラ投資を待たず解決する手助けとなっているのが、フィルター付きのキャップ「Filter caps」だ。縦6センチメートル、横4センチメートルで、24グラムと非常に小さく軽い。ペットボトルのキャップの平面を背中合わせにしたようなデザインになっている。

その使用方法は簡単。まず一つのペットボトルに浄化前の水を入れる。そのボトルの口にフィルターキャップを通常のキャップと同じ要領で取り付け、その上から空のペットボトルを逆さまにして同様に装着する。上下に接続された2つのペットボトルを反対向きに立てると、砂時計のように水がフィルターを通って空のボトルへと滴る。こうして溜まった水が飲み水として利用できるのだ。

本体はコーンスターチ製で、フィルター部分は大きく三層に分かれており、上から順にメタル、ミネラル、その他自然物(カチオン樹脂、クルミの殻、KDFパール)が含まれている。この順に水が通ることによって、浄化される仕組みだ。不純物を70%除去し、重金属を90%除去するのに加えて、pHと水素を増加させることができる。

このキャップは、3Dプリンター技術を用いた製造が可能だ。世界中に存在するペットボトルの形状はさまざまだが、そのうち99%に対応しているため、国や地域ごとにデザインを変更する必要はない。

2024年9月現在、対象地はコロンビア、アルゼンチン、ブラジルの、都市から離れたコミュニティ。水不足の中、Filter capsはインフラが整っていない地域でも身近な水を飲み水にするためのツールとして提供されているのだ。

経済的な効果も見られる。キャップ一つあたり5.89ドル(約850円)で製造でき、下痢の薬が10ドル(約1,440円)であることと比較しても安価だ。キャップは繰り返し使用可能であることを考慮すれば、その影響力はさらに大きいと考えられる。

この取り組みは、コロンビアの浄水企業・FILSAと、赤十字社などの協働によって実現した。2025年までに10万個のフィルターキャップを届けることを目標としている。

インフラが必要ないということは、自然災害が多い日本でも大いに役立つツールであるはずだ。たとえば、このフィルターを応用した浄水機能を備えていたら、断水が起きても地域内で飲み水を確保することができるかもしれない。外部からの給水車だけに頼るのではなく、地域内で自給することも可能だろう。

Filter capsは小さくシンプルな構造であるからこそ、広く長く使うことができる。エネルギー消費の大きい最新テクノロジーが台頭していく今、誰でも扱いやすい道具が人々の暮らしをより良くしていく側面にも、光を当てていきたい。

【参照サイト】Filter caps
【参照サイト】Red Cross to Hand Out Revolutionary Water Filter in Colombia
【参照サイト】En Colombie, la Croix Rouge crée un bouchon filtrant qui rend l’eau potable
【参照サイト】Red Cross to Hand Out Revolutionary Water Filter in Colombia
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