社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、保護犬と一緒に入場したサッカー選手や、エジプトでのマラリア根絶などのニュースを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01. カナダで続く“髪凍結コンテスト”が話題。地球温暖化の啓発にも
ある写真に写っているのは、温泉につかり何やら楽しそうにする人々。異様なのは、その髪の毛だ。全員の髪が白く凍っていて、逆立てて尖らせたり、左右に真っ直ぐ伸ばしてみたりと、どれも驚くような形になっている。
実はこれ、カナダ北部のホワイトホース地区にあるホットスパ施設が2012年に開始した「髪凍結コンテスト」というイベントだ。ウェブサイトには参加者の写真や、髪の毛を凍らせる3ステップが掲載されている。6つのカテゴリーにわけて優勝者を決めており、約30万円の賞金まで用意されている。
一方で、このコンテストにも気候変動の影響が及んでいる。温泉で髪を凍らせるには気温がマイナス20度に達する必要があるが、2023年は十分な寒さにならず年を越すまでコンテストを延期しなくてはならなかった。「これからも髪を凍らせて楽しむために、温暖化を止めよう」──そんな想いも込めて、髪凍結コンテストは支持されているようだ。
【参照サイト】Canadian Spa Hopes Hair-Freezing Contest Can Continue for Another 12 Years – SEE the Hilarious Winners
【参照サイト】Canada’s Hair Freezing Contest Is Now Under Threat Due To Lack Of Cold Weather
02. アヒルの排泄物から、がん細胞の増殖を遅らせる化合物を発見。きっかけは中学生
時に、子どもたちの純粋な視点は大きな発見のきっかけになることがある。アメリカ・シカゴの中学生グループは、社会的マイノリティを対象としたSTEM教育の一環で、イリノイ大学シカゴ校で生物医科学の研究を体験する14週間のプログラムに参加していた。生徒たちは自然物のサンプルを採取し、大学院生などと協働して分析を行うというものだ。
これに参加していたCamarria Williamsさんは、公園でガチョウのフンを見つけた。研究室に戻って分析してみると、抗生物質を含む細菌や、卵巣がん細胞の増殖を遅らせる新規化合物などが含まれていることが判明したという。この発見は研究者に引き渡されて2024年10月に論文として発表され、発見者のWilliamsさんも共著者として掲載された。社会にインパクトを与える発見をする力に、年齢は関係ないのだ。
【参照サイト】Middle schooler finds novel compound in goose poop. Scientists say it may fight cancer
03. スウェーデンのファッションブランド・ASKETが「リペア限定営業」でブラックフライデーに対抗
毎年11月下旬になると至るところで「ブラックフライデー」によるセールやキャンペーンが話題にあがる。その起源は諸説あるものの、アメリカにおける感謝祭(11月第4木曜)翌日である金曜日に休みを取る人が多く、買い物客でごった返し警察にとって多忙な一日となることから、ネガティブな意味を込めて「暗黒の金曜日」と名付けられたようだ。ただし今では、むしろ市民にとって嬉しいセール期間として定着している。
しかし、これによって人々が必要でないものを購入したり、よく考えずに買って廃棄してしまったりと、ブラックフライデーをめぐる環境負荷も問題視され始めている。この懸念にアクションをとった企業の一つが、スウェーデンのファッションブランド「ASKET」。ブラックフライデー当日の11月29日、店舗およびオンライン販売を止め、無料のリペアサービスと、スペアパーツの提供を行ったのだ。一部店舗では修繕済み衣類のみ販売された。
同ブランドは、こうしてブラックフライデーに対抗する取り組みを8年にわたって続けている。近年ブラックフライデーセールが急速に定着した日本でも、ASKETのように「本当に買う必要があるか」と問いかけることができるブランドが必要ではないだろうか。
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【参照サイト】Black Friday doesn’t have to be an environmental disaster. These 5 brands are doing things differently
【参照サイト】ASKET
04. 風の力でスカーフを編む、オランダのデザイナー
「風の力を使う」といえば、真っ先に思い浮かぶのは大きなブレードを持つ風力発電機だろう。「風力の活用」というと、どこか自分とは距離のあるものに感じられがちだが、実は身近なところでも活用することができる。オランダのデザイナー・Merel Karhof氏は、風力でスカーフを編む「ウィンド・ニッティング・ファクトリー」という編み機を考案。これは建物のファサードに取り付けた風車で風を集め、その力で編み機を動かすというものだ。スカーフは、風が強いときは速く、風が弱いときにはゆっくりと、建物に沿って編まれていく。
スカーフには、作品を風で作るのにかかった時間を書いたラベルが貼られる。Karhof氏はこの編み機を通し、「身の回りには、何かを作ることができる無料のエネルギー源がある」というメッセージを伝えているのだ。
【参照サイト】Wind knitting Factory
05. デンマークが農地の15%を自然に返すことを発表
気候変動が加速する背景として、農業のインパクトは無視することができない。土地の利用方法、特に産業のための森林破壊や泥炭地の劣化は年間約35億トンの二酸化炭素を排出しているのだ。
そんな中、デンマークが農家への報酬プログラムを通じて、国内の農地の15%を森林や泥炭地に戻す計画を発表した。同国は農業とあわせて、今後炭素税の導入によって畜産業にもアプローチしており、産業を超えてCO2排出量の削減を目指しているのだ。これが実現すれば、国土の10%が自然に返ることになるという。気候変動対策として、大規模な産業構造の転換例となるかもしれない。
【参照サイト】Denmark is returning 15% of its farmland back to nature