山火事が広がるLAで、市民の支えになるか。最新の火災情報を見える化する地図アプリ「Watch Duty」

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そこに街があったとは思えない光景に心を痛めた方も多いであろう、ロサンゼルスでの山火事。2025年1月7日の発生から1週間以上が経った現在も鎮火には至らず、火が広がる可能性が残っている。未だ火元は不明だが気候変動と関連づけられた報道も多くみられる状況だ。

この混乱の中で、誰もが山火事についての情報を効率的に収集できるツールとして、ダウンロード数が急上昇しているアプリが「Watch Duty」だ。火災が起きている場所、消火の度合い、風向きや避難情報などをマップ上で一気に確認することができる。

その情報源は、無線通信を傍受するスキャナーや野生動物を観察するためのカメラ、衛生データ、そして公的機関が発表している内容など。複数のサイトに飛ぶ手間もなく、一つのアプリで火災についての最新情報をほとんど網羅できるのだ。

2025年1月8日には、AppleのアプリストアでChatGPTを超えて最もダウンロードされたアプリとなった時間帯もあったという。ウェブ版も提供されていることから、さらに多くの人が同サービスを頼りにしているだろう。

筆者作成|Image via Watch Duty

Watch Dutyは、2021年にローンチされた無料のアプリ(一部サービスは有料)。アメリカ西部・中部の22州の情報を追っている。これまで、主に消防士たちに重宝されてきたそうだ。

このアプリを運用するのは、非営利組織・Sherwood Forestry Service。元消防士や元救急隊員を含めた15人の社員と約150人のボランティアが、24時間無線を聞き、カメラやデータを確認して、アプリに最新の情報を反映している。機械やクラウドソースではなく、知見を持つ個人の力に支えられているのだ。

最新情報へアクセスできるツールは、人々にとって心の支えとなるだろう。ただ、大切な場所を奪われた人々には、生活を立て直すための未来の負担も重くのしかかる。CNNによると、同地域では山火事のリスクが高いことから火災保険の更新拒否や新規契約の拒否が常態化し始めていた。保険を外されたばかりの人もいる中で起きた山火事だったのだ。

今回の場合、民間の火災保険に入っていない家庭の多くは、カリフォルニア州が設置した「カリフォルニアFAIRプラン」に頼らざるを得ないという。しかしその財源も底をつく可能性が懸念されているようだ。

火災情報をわかりやすく迅速に伝える手段は、市民のネットワークによって実現しつつある。そんな支え合いは、被害を受けたコミュニティの再建においても力を発揮するだろうか。これ以上被害が広がらないことを祈ると同時に、経済状況にかかわらず日常を取り戻すための助けが得られることを強く願う。

【参照サイト】Watch Duty
【参照サイト】Watch Duty overtakes ChatGPT in the App Store as California wildfires spread|Fast Company
【参照サイト】With L.A. on alert, wildfire app Watch Duty adds 600,000 users overnight|Los Angels Times
【参照サイト】California’s wildfires may also be catastrophic for its insurance market|NPR
【参照サイト】LA山火事 避難や警告の対象住民減少も火の勢い増すおそれ|NHK
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