瀬戸内海に浮かぶ「レモンの島」、広島県生口島。この美しい島を舞台に2025年2月23日、「レモンマラソン2025」が開催される。

Image via せとだレモンマラソン
この大会は単なるランニングイベントではない。走ることを通じて「まち」と「人」と「地球」をつなぐ挑戦だ。大会が掲げるのは、「まちの誇りになる大会づくり」「環境負荷低減へのコミットメント」「スポーツ × ツーリズム」の3つのコンセプトである。

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過去2回の大会を通じて育まれてきた物語は、今大会でさらに深みを増し、参加するすべての人々を巻き込んで広がっていく。
「これまでにないマラソン大会だった」
2024年大会に参加したランナーがそう語るように、せとだレモンマラソンは単なる競技の枠を超え、島の人々とランナーが一体となる特別な日だ。
ランナーたちは、島を一周するコースを駆け抜ける中で、瀬戸田の自然と文化に触れる。風に乗って漂う柑橘の香り、眼下に広がる凪の瀬戸内海、そして沿道に立つ地元住民の声援……それらが一つになって走る人々の背中を押す。また、島中の人々がランナーを歓迎し応援する光景は、地域全体の活気づけにもつながっているという。コースを走り終えたランナーが「またこの地に戻りたい」と口を揃えるのは、この大会の持つ独特なアットホームさゆえだろう。

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参加者一人ひとりが瀬戸田の魅力を持ち帰ることで、地域の価値はさらに高まり、「まちの誇り」も再構築されていく。この「誇り」を未来へと繋ぐため、次の挑戦として掲げられているのが「環境負荷低減へのコミットメント」だ。
多くのマラソン大会が抱える課題の一つに、大量のごみ問題がある。この大会では、大会前・中・後の3段階に分け、一貫した環境配慮型の取り組みを実施している。
まずは、大会前。2024年の大会で排出された二酸化炭素量を分析し、その可視化を行う。このデータを基に、今大会では参加者に公共交通機関の利用や自動車の相乗りを事前に推奨。
さらに大会当日は、ランナーはマイボトルを携帯し、ペットボトルや紙コップの廃棄をゼロに。給水所にはジャグが設置され、環境負荷を抑えた給水スタイルを実現。また、衣類のサーキュラーエコノミーに取り組むBRINGによる古着のリサイクル回収を行い、不要な衣類が新たな資源として再生される仕組みも取り入れている。過去大会で回収された古着は、今大会で参加者に配布されるワッペンに再利用され、参加者の環境意識をさらに高めることに寄与するという。

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大会終了後は、尾道市のブルーカーボンクレジットを購入し、大会で排出されたCO2をオフセット。発生した生ごみはすべてコンポスト化され、地域の農家に配布される。
これらの取り組みは、大会を通じて持続可能な未来への道筋を示し、ランナー自身がその一部となることで「走ることが未来を変える」というメッセージを強く伝えているのだ。
そして、環境への責任と地域の誇りを支えるもう一つの柱が、「スポーツ × ツーリズム」だ。
「島に集まる人たちとの時間が幸せでどんどん好きになる」
そう語るランナーたちは、瀬戸田での滞在がレース以上の価値を持つことを知っている。エイドステーションには地元の柑橘や地域の人々の手作り料理が並び、走りながら地域の魅力を味わうことができ、マラソンを終えた後には地元の特産品が並ぶマルシェが広がり、新鮮な柑橘や加工品、地元食材を使った料理が疲れを癒す。レース後にマルシェで乾杯し、島の銭湯で汗を流し、観光を楽しむ。せとだレモンマラソンは、そんな一日を提供している。

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さらに、大会前日には前夜祭や交流イベントも実施。地元住民とランナー、観光客までもが語り合い、瀬戸田という土地の魅力を共有する場となる。こうした体験が、ランナーたちに「また瀬戸田に戻ってきたい」という思いを抱かせるのだ。せとだレモンマラソンを企画している「しおまち企画」代表の小林亮大さんは、「世界一アットホームで環境にも人にも優しい大会を目指しています」と意気込む。
せとだレモンマラソンは、走ることを通じて「まち」「環境」「人」をつなぐ大会だ。3つのコンセプトが有機的に結びつき、単なるスポーツイベントを超えた価値を提供している。
大会のスローガンは「走った分だけ、好きになる」。その言葉が表すのは、ただ島や大会を好きになるということだけではない。ランナー自身が、地域や地球の未来を創り上げる一部となる喜びだ。2025年2月23日、ランナーたちが走るたびに深める土地への愛情を感じに、瀬戸田に足を運んでみてはいかがだろうか。
【参照サイト】せとだレモンマラソン2025
Edited by Erika Tomiyama