感覚過敏の人も、スポーツ観戦を楽しめるように。東京ドームで販売された「やさしいチケット」

Browse By

スタジアムでのスポーツ観戦といえば、同じチームを応援するファンと一体になって声援を送ったり、応援歌を歌ったり、得点の瞬間にみんなで歓喜の声をあげたりと、喜怒哀楽をともにすることが醍醐味の一つ。

しかし、その声量や密集度、強い光の出る演出に、緊張や不安を感じる人もいる。感覚過敏のある人にとっては、一緒にチームを応援したくても、スタジアム特有の環境に馴染むことが難しいのだ。彼ら・彼女らは、家でテレビ中継を見るしかないのだろうか。

この選択肢を広げる取り組みが、東京ドームで初めて試験的に導入された。2024年9月22日、プロ野球イースタン・リーグ公式戦にて「センサリーフレンドリーチケット」が販売されたのだ。

このチケットは、主に感覚過敏の子どもたちに向けて用意されたもの。購入者は人が密集しない3階バルコニー席で観戦することができ、特典としてスクイーズボールやハンドスピナーなどのセンサリーアイテムの入ったバッグがついてくる。光や音の強い刺激を抑え、慣れない場所でも落ち着けるよう、サングラスやイヤーマフ、ブランケットの貸し出しも行われた。

当日配布されたセンサリーフレンドリーバッグとグッズ|Image via 乃村工藝社

当日このチケットを利用した、感覚過敏のある子どもを持つ家族は「これまで野球観戦の機会はなかったが、外出のきっかけになり、家族で楽しむことができた」という。バッグ自体も子どもに喜ばれており、普段のお出かけで活躍しているようだ。

さらに、センサリーアイテムは、感覚過敏ではない子どもたちにとっても嬉しい特典に。長時間じっと座っていることが難しい未就学の子どもが遊ぶことができ、ゆとりのあるスペースで気兼ねなく家族で楽しむことができたそうだ。また高齢者の方にとっても、観戦しやすい環境になったとのこと。

センサリーアイテムを収納するバッグのデザインには、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」と契約するアーティストの作品が採用された。

Image via 乃村工藝社

この取り組みを主導した株式会社乃村工藝社は、「特定のニーズを持つ当事者への空間は、誰もが快適に過ごせる空間となる可能性がある」とコメント。同社は2022年から「センサリールーム」の研究・開発もしており、当事者の声や試験導入からの学びを、新しい共用空間づくりにも活かしていくことを見据えている。

誰かが、何かを「できない」とき、それは個人の問題ではなく社会の設計や選択肢の問題かもしれない──そんな視点から日常を切り取ってみると、あらゆる人に優しい社会に近づく一歩が見えるはず。センサリーフレンドリーチケットは、そんな優しさを広げる切符となるのではないだろうか。

今後のセンサリーフレンドリーバッグ提供機会(2025年1月15日時点)

男子プロバスケットボール りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2025 IN FUNABASHI
日時:2025年1月18日(土)13:00~(開場12:00)/1月19日(日)11:00~(開場10:00)
会場:LaLa arena TOKYO-BAY(千葉県船橋市)
実施内容:受付にて、センサリーフレンドリーバッグ「みんなで観戦バッグ」の提供およびアイテムの貸し出し
詳細:乃村工藝社ウェブサイトおよびB.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2025 IN FUNABASHI 特設サイトよりご確認ください

【参照サイト】誰もが過ごせるインクルーシブスタジアム実現に向けたトライアル |「センサリーフレンドリーバッグ」展開開始|乃村工藝社
【関連記事】LEGOが店舗に“感覚過敏”対策セットを設置。自閉症の子の買い物ストレスを軽減
【関連記事】感覚過敏の人がリラックスできる「静けさの部屋」米ポートランドの空港内に登場

FacebookTwitter