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【2024年版】再生可能エネルギーを巡る世界の潮流は?その種類とメリット・デメリット

太陽光発電
年々深刻化する気候変動。2023年11月末から12月にかけて、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されたCOP28では、パリ協定が目指す1.5度目標達成のための「グローバル・ストックテイク」を初めて実施。合意文書では「エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却(※1)」が明記され、対策の必要性が増したことが示された。

気候変動への対策として欧州を中心に世界中で加速しているのが、脱炭素の動きである。約200か国が参加したCOP28では「この重要な10年間に行動を加速させ、科学に則って2050年までにネット・ゼロを達成する(※1)」ことが掲げられた。つまり、2050年までに化石燃料からの脱却を進め、特に1.5度の気温上昇を抑制するために重要な2030年までの10年間に、行動を強化することに各国が合意した。

その脱炭素化を目指すにあたるひとつの鍵とされているのが、発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーへのシフトである。

世界的にその動きは加速しており、COP28の合意文書にも、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを30年までに現在の3倍に増やし、エネルギー効率改善を2倍に引き上げるという目標が盛り込まれた。国際エネルギー機関(IEA)による最新の脱炭素ロードマップ(2023年)においては、2050年までのネットゼロ目標達成に向けた戦略として、必要不可欠な要素として再生可能エネルギーの促進を挙げている。

現在、日本の再生可能エネルギー電力比率は約19.8%(2020年)。再生可能エネルギーの発電設備容量は世界第6位、太陽光発電は世界第3位(※2)であり、2030年までに再生可能エネルギー比率を36~38%まで高めることを目指している(※3)

今回は、そんな再生可能エネルギーをめぐる世界の潮流や、現段階での再生可能エネルギーのメリットとデメリット、世界のユニークな再生可能エネルギーの事例などを紹介したい。

再生可能エネルギーをめぐる世界の潮流

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2022年は再生可能エネルギーの発電容量が記録的に増加し、世界で約300ギガワットの再生可能エネルギーが新たに導入された。新規設備容量に占める再生可能エネルギーの割合は83%である。さらに、再生可能エネルギーへの投資は、2022年には0.5兆米ドル(2024年1月現在: 74兆円超)に達した(※4)

国際エネルギー機関(IEA)の最新報告書(2023)によると、政策的機運の高まり、化石燃料価格の上昇、エネルギー安全保障への懸念が、特に太陽光発電と風力発電の導入を強力に推進しており、世界の再生可能エネルギー発電容量は全体の3分の1に急増すると予想されている。この成長は2024年も続き、世界の再生可能エネルギー発電容量は4,500ギガワットまで上昇し、これは中国と米国を合わせた総発電量に匹敵するという(※5)

しかしながら、パリ協定の1.5℃目標を達成するには、年間約1,000ギガワットの再生可能エネルギーを導入する必要があり、現在の約300ギガワットからさらに大幅に改善する必要がある。投資額で見ると、これは毎年必要とされる再生可能エネルギーへの平均投資額の約3分の1に相当する(※4)

そして、2022年には化石燃料への補助金が過去最高水準に達している。エネルギー転換技術への世界投資は2022年に過去最高の1兆3,000億米ドルに達したが、化石燃料への投資は再生可能エネルギーへの投資の約2倍であったなど。再生可能エネルギーの拡大にはまだまだ改善の余地がある。

再生可能エネルギーを活用するメリットは、脱炭素の観点以外に、自国のエネルギー自給率を引き上げられる部分にもある。特に、エネルギー自給率が13%程度(2021年)と先進国の中でも非常に低い日本にとっては、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの拡大が、化石燃料の輸入に頼る比率を減らすことにもつながり、より安全・安定的に国内のエネルギー需要を満たしていけるようになると期待されている。

また、小規模かつ分散型という特徴を持つ再生可能エネルギーは、エネルギーが生産された地域で消費される「エネルギーの地産地消」を実現しやすいため、結果的に地域経済の活性化にもつながる大きなポテンシャルもある。

洋上風力発電

何を再生可能エネルギーとするか?国によって異なる定義

前提として、どのエネルギーを再生可能エネルギーとするかは国によって異なり、政治的・経済的な問題とも絡んでくる。本稿では、日本の経済産業省・資源エネルギー庁が公表している再生可能エネルギーのリストを指標とし、その中の太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱を取り上げたい。

また、燃焼時にCO2を排出しないことから「再生可能エネルギーと同等のポテンシャルを持つ」として現在日本政府が注目している水素とアンモニアについては、番外編として紹介する。

そして、上記と同じく発電時にCO2を排出しないという理由から、一部の国では原子力をグリーンエネルギーと定義しようとする動きもある。しかし、深刻な放射性廃棄物を放出し、その危険がなくなるまでに数万年もかかるなど地球環境を汚染する原子力を、CO2を排出しないという理由だけで「地球に優しい」と言えるのかという批判は根強い。実際、EUが2022年に原子力をグリーンエネルギーとして認めようとした際、ドイツやオーストリアなど脱原発を掲げる多くの国が反対した。現在、EUは原子力を「化石燃料に代わる低炭素エネルギー」と表現している。

再生可能エネルギーのメリットとデメリット

再生可能エネルギーをめぐる世界の潮流をおさえたうえで、ここからはそれぞれの再生可能エネルギーのメリットとデメリット、現状での課題を挙げていく。

太陽光発電

【メリット】
太陽の光には限りがないため、基本的にエネルギー源が無尽蔵である。また、既存の建築物の屋根や壁に設置することができ、設置工事も比較的簡単であるため、企業や個人での導入が容易だ。電気を自社や自宅で生み出すことができると電気代の節約になるだけでなく、蓄電池を併設すれば余剰分を売電することも可能となり、追加の収入が得られる可能性もある。また、災害による停電時の電源としても機能するため、自社や自宅、周辺地域の防災・減災の観点からも評価されている。

近年では、農地の上部にパネルを設置する「営農型太陽光発電」も盛んになってきていたり、海外では海上の太陽光発電所の建設が始められていたりと、その活用方法自体も広がりを見せている。水や送電網がない地域でも発電できるため、貧困層の電力や収入源としての可能性も注目されている。

【デメリット】
一般的な太陽光パネルは雨天時には発電できないため、基本的に電力の安定性確保には蓄電池との併用が必要となる。また、太陽光発電で大量の電気を作るためには広大な土地が必要となり、国土の小さい日本のような国では設置場所に限界がある点がデメリットと言える。一部の地域では太陽光パネルを設置するために森林伐採が行われ、土砂災害や生態系の破壊を引き起こしていることも問題となっている。

さらに、一般的な太陽光パネルには鉛やカドミウムといった有害物質が含まれており、放置されると土壌や水の汚染につながる可能性があるため、使用後は適切な廃棄や処理が必要だ。このため、将来的に大量廃棄されるであろうパネルの処理に関する規制や、パネルリサイクル市場への投資が必要とされている。

風力発電

【メリット】
風さえあれば夜間でも発電が可能であり、エネルギー変換効率は一般的なもので20〜40%、最大60%と、全ての発電方法の中でも比較的高い。そのため、発電コストが比較的低く抑えられ、大規模な導入が行われれば、火力発電に匹敵するコストパフォーマンスを実現でき、経済的な面で安定性がある発電方法だ。また、洋上風力発電は、安定して強風が吹く環境を有効に利用でき、陸上の風力発電と比較してスペース確保が容易である。この特性から、近年では注目を集めている。日本のように周囲が海で囲まれた地域では、洋上風力発電のポテンシャルが高い。

【デメリット】
風向きや風速によって発電量が左右されるため安定性に欠ける。また、陸上風力発電の場合、風車を設置できる広大なスペースが必要となり、近隣地域への騒音被害なども考慮すると、設置場所が限られてくる。さらに、現段階では一般的な風力発電機を企業や個人が個別で導入することは難しく、事業者の研究開発にもコストがかかる。(自宅やオフィスに導入できる新しい形状の風力発電機も開発され始めている。)

また、支柱が高く、標高が高い開けた場所に置かれる風車への落雷事故や、風力タービンに鳥が衝突して亡くなるバードストライクも課題となっている。そして、役目を終えた風力発電機はリサイクルしづらく、埋め立てなど環境負荷のかかる方法での廃棄がなされるケースがある。

水力発電

【メリット】
太陽光発電や風力発電と比較して発電量が天候に左右されにくい点や、エネルギー変換効率が約80%と、再生可能エネルギーの中では非常に高いことが挙げられる。また、小規模な「小水力発電」は、新たにダムを造る必要がないため環境への負荷やコストを最小限に抑えて始めることができるほか、地域で作った電力を地域で消費する、「エネルギーの地産地消」にもつながる。

【デメリット】
大規模な水力発電所の建設には高額な費用がかかるため、初期投資の回収期間が長くかかる。また、水の利用に関する利害関係により、発電施設を設置できる場所が限られたり、法的手続きが煩雑になったりする可能性がある。大規模な発電所建設は地域の生態系へ影響を与えるため、その点も考慮する必要がある。

バイオマス発電

【メリット】
バイオマス発電は、動植物などの有機性燃料を燃やして発電する方法で、その際に発生するCO2が有機物が育つ過程で吸収したCO2で相殺されるため、最終的にはカーボンニュートラルになるとされている。この方法は、生ごみや廃材など、さまざまな廃棄物を資源として有効活用することができ、燃料さえ確保できれば天候にかかわらず安定的に発電することができる点がメリットと言える。また、バイオマス発電が地域産業として根付くことで地域の雇用創出につなげられる可能性もある。

【デメリット】
資源となる廃棄物の収集や運搬、利用されるまでの管理に手間やコストがかかる。また、人間が食べられるサトウキビやトウモロコシなどの作物を燃料として使った場合、食料の争奪につながる可能性もある。このため、今後は稲わらや木材などのセルロース系バイオマスを原料として商業的に使用できるよう、研究開発が推進されている。さらに、バイオ燃料生産のために森林が伐採され、耕地とされる動きにも注意していく必要がある。

地熱発電

【メリット】
発電の原理は火力発電や原子力発電と同じであるため、天候に関わらず発電することができる。また、蒸気を再利用して発電することも可能だ。日本は地熱発電において世界第3位の資源量を持つ国であり、その可能性の大きさも指摘されている。

【デメリット】
基本的に、地殻変動が激しい地域でのみ可能な発電方法である。また、導入するためには、土地が発電に向いているかなどの調査や地下の開発に伴うリスクの検証、温泉事業者を始めとする地域の理解なども必要となるため、開発から発電所の稼働に至るまでには長い期間を要する。

番外編

水素発電

【メリット】
水素発電は、水素燃料を燃焼させてエネルギーを発生させる発電方法であり、次世代のクリーンエネルギーとして非常に注目されている。水素燃料は燃やした際にCO2などの有害物質をほとんど排出せず、多様な資源から生成できることがメリットとされている。また、水素は液化することで輸送や貯蔵が可能となり、余剰エネルギーの貯蔵や運搬に使われ、必要なときに必要な分だけエネルギーを使うためには効果的な方法として期待されている。

【デメリット】
水素燃料は自然界に存在しているものではなく、石油や天然ガスから産出する、もしくは他の再生可能エネルギーで水を分解して生成する必要がある。あまり使用されておらず安価な「褐炭(低品位な石炭)」や未使用のガスなどを原料として使うことはできるが、化石燃料から生成された水素は生成の際にCO2を排出するため、再生可能エネルギーとは言えない。これに対し、生成の際に排出されたCO2を吸収し、貯蔵、利用する技術「CCU」「CCUS」などを使った水素を「ブルー水素」と呼び、近年この技術の開発も進められている。なお、太陽光発電や風力発電の余剰電力を使って生成された水素は「グリーン水素」と呼ばれ、一切CO2を排出しないため、脱炭素のためには最も効果的な方法とされている。

現状では水素燃料の生成、また燃料の保存や輸送には大きな手間やコストがかかり、低コスト化のためには、安価な原料を使って水素をつくることや、水素の大量製造や大量輸送を可能にするサプライチェーンを構築すること、燃料電池自動車や発電、産業利用などで大量に水素を利用することなどが必要とされている。また、水素には着火から燃焼までのスピードが早く高温で燃えるという性質があり、安全性もしっかりと担保したうえで使用していく必要がある。

アンモニア発電

【メリット】
アンモニア発電は、燃料であるアンモニアを燃やして得た熱エネルギーでタービンを回し、電気に変える発電方法だ。アンモニアを燃焼させやすくする専用のバーナーを取り付ける必要はあるが、基本的には既存の火力発電設備を使用することができるため、比較的低コストで導入することができ、電力の値上がりも抑えられる。水素と同じく燃焼時には二酸化炭素を排出せず、水素と比べて液化した際の貯蔵や運搬が容易であり、現在も広く使用されているため扱い方が確立されている点もメリットである。

【デメリット】
現在アンモニアを作るときに一般的に用いられている、「ハーバー・ボッシュ法」は、水素と窒素を高温・高圧の触媒反応でアンモニアに転換する方法であり、大量のCO2を排出してしまう。近年では、水と空気からアンモニアを作る方法なども研究開発されているが、実用化のためには更なる研究開発が必要となっている。さらに、発電時に酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOX)が排出されてしまうことも課題となっている。また、アンモニア発電推進のためには、アンモニアの生産拡大及び海外から調達するためのサプライチェーン構築も必要だ。

なお、アンモニアの原料となる水素の生成時に「CCU」「CCUS」技術を用いたアンモニアは「ブルーアンモニア」と呼ばれ、再生可能エネルギーを用いて作られた水素で作られたアンモニアは「グリーンアンモニア」と呼ばれる。

日本政府は現在、アンモニアと水素を化石燃料の「移行燃料」と位置づけ、化石燃料との混焼を促進することでCO2排出量の削減に取り組んでいると主張している。しかし、日本はCOP28で不名誉な「化石賞」を受賞した。これは、アンモニアと水素の生産が環境に与える影響を考慮せず、実現可能性が未知数であること、仮に実現したとしても化石燃料への依存度が高いことを前提とした「グリーンウォッシュ」的なモデルであることが批判されたためである。

再生可能エネルギーのユニークな事例

ここからは、世界の先進的でユニークな再生可能エネルギーの事例を紹介する。廃棄物を活用して発電する方法や、これまで使われていなかった自然の力をエネルギーに変換するものなど、さまざまだ。

自宅用風力発電、登場

アメリカのデザイナー、ジョー・ドウセット氏は、家庭やオフィスに設置できる風力発電機「Wind Turbine Wall」を開発した。この風力発電機は、壁に垂直に取り付けるように設計されており、設置場所の広さに応じて設備サイズをカスタマイズできる。デフォルトのサイズで年間1万キロワットアワーの発電が可能で、一般家庭の消費電力を十分に賄えるという。また、発電した電力は使うだけでなく、バッテリーに蓄電することもでき、使い方によっては発電した電気で収入を得ることもできる。ドウセット氏は現在、この「Wind Turbine Wall」の商用化を目指している。

自宅用風力発電、登場

羽根から橋へ。捨てるしかなかった「風力発電機」のアップサイクル

北アイルランドのクイーンズ大学ベルファストを中心とした「Re-Wind」研究・開発チームは、この問題に取り組み、風力タービンの羽根(ブレード)を橋やイスなどの有用な製品にアップサイクルするプロジェクトを進めている。これまで、役目を終えた風力発電機のブレードは、その強力な耐久性ゆえリサイクルが難しく、処分されてきた。巨大な風力タービンの羽根は生分解性がないため、埋め立てるか焼却するしかなかった。しかし、Re-Windプロジェクトチームは、「耐久性」という、処分時における弱みを、歩道橋や椅子など、強度を必要とする製品に生まれ変わらせることで、強みに変えたのだ。

羽根から橋へ。捨てるしかなかった「風力発電機」のアップサイクル

雨の日だって再エネは作れる。中国で進む「雨粒発電」

中国の清華大学の研究者たちから発表された、雨粒から発電する新技術。雨粒が空から降ってくるときに発生する少量の運動エネルギーを電気に変換する「摩擦電気ナノ発電機(TENG:Triboelectric nanogenerator)」である。液滴ベースのTENGパネルアレイの最大出力は、1平方メートルあたり約200ワット。スマホの充電や、1畳ほどのホットカーペットにも使うことができる電力だ。まだ初期段階ではあるが、雨の多い場所や、従来の水力発電のための川やダムなどから遠い場所、将来的には台風や暴風雨の際で特に活躍することが期待されている。

雨の日だって再エネは作れる。中国で進む「雨粒発電」

着て歩くだけで発電できる?太陽電池を織り込んだ布が登場

2022年、イギリスのノッティンガム・トレント大学の研究者が「太陽電池を織り込んだ布」を発表した。この布には縦5mm、横1.5mmのシリコン製太陽電池が織り込まれており、服やバッグに使用できる。服を着て外を歩くだけで、自家発電ができる。普通の服と同じようにたたんだり、洗濯機で洗ったりできるそうだ。これは「電力の民主化」に貢献する画期的な技術であり、大手電力会社に頼るのではなく、市民が自分たちの生活に必要な電力を自分たちで発電できるシステムを推進するものである。

着て歩くだけで発電できる?太陽電池を織り込んだ布が登場

より環境に優しい、カラフルなソーラーパネル

オランダのソーラーデザイン事務所・Marjan van Aubel Studioが「ドバイ・エキスポ2020」に合わせて手がけたのは、既存の太陽光パネルに含まれる有害物質や廃棄・処理の課題を解決する、見た目も美しい色鮮やかなソーラーパネルだ。環境に配慮された素材や染料から作られているため、廃棄後に適切な処理が行われない場合の危険性も低く、薄く軽量のリサイクルPETのフィルムにプリントされているため、パネルの分解、組み立ての作業が容易で、誰でもどこでもパネルを丸めて持ち運ぶことができる。

「まるでステンドグラス」なソーラーパネルが登場。自然素材で環境問題を解決するアート作品へ

太陽の動きに合わせて動くソーラーパネル

オーストリアで生まれた「Smartflower」は、常に太陽に対して90度の角度で傾くよう、太陽の動きに合わせて向きを変えるソーラーパネルだ。従来のソーラーパネルより40%も多くのエネルギーを生成でき、天候が悪い日には自動でパネルが閉じる設計になっている。生物が長い年月をかけて最適化した形態や仕組みを技術開発に活かす、「バイオミミクリー」の好事例と言える。

エネルギー生産40%アップ。太陽の動きに合わせて開いて傾くひまわり型ソーラーパネル

オレンジから生じるメタンをエネルギーに

スペイン・アンダルシア州の州都セビリアでは、地域に根付くオレンジが発酵するときに生じるメタンからクリーンエネルギーを生成する取り組みを試験的に始めている。技術者の計算によると、1トンのオレンジから5世帯の1日分の消費電力に相当50キロワットアワーの電力を生成できる。廃棄物を資源として有効活用する部分はサーキュラーエコノミーの観点からも評価されるものである。

オレンジをクリーンエネルギーに変える、セビリアの計画

カカオの殻から作るバイオエネルギー

世界2位のカカオ生産国のガーナでは、これまで大量に廃棄されていたカカオの殻からバイオエネルギーをつくる研究が進められている。プロジェクトは、ガーナの農村地域へのエネルギー供給だけでなく、カカオの殻の収集や輸送、処理などの新しい仕事を生み、地域の人々の生活を安定させることも目指している。

ガーナの農村に電気と雇用を。カカオの殻からつくるバイオエネルギー

人間の運動をエネルギーに変換

スウェーデン南部の都市・ルンドに2024年にオープンする予定なのは、屋上に設置された自転車「エナジーバイク」によって電力を発電できるミュージアムだ。デザインを手がけたデンマークの建築会社COBEは、「難しくとらえられがちな自然科学を、もっと身近なものにしたい」という想いでこの遊び心のある仕組みを取り入れた。

屋上サイクリングで発電。スウェーデンに設立される、カーボンニュートラルな博物館

波の力をエネルギーに変換

フランス北西部ノルマンディー地方の海上では、欧州最大となる波力発電所の建設が2021年に開始された。ノルマンディー地方に浮かぶオルダニー島とアーグ岬の間に位置する、特に水の流れの強い13㎞の区間に、容量2MWの水平軸タービンを並べて2GWの波力発電所が建設される予定で、波の力を利用する発電の将来的な可能性について、技術面と経済面から調査することを目的としている。

「波」を利用したヨーロッパ最大規模の発電所、2021年に建設開始

雨の日でも発電できる太陽光パネル

中国・蘇州大学のZhen Wen氏などの技術者らは、雨粒をエネルギーに変える太陽電池を発表。雨の雫の動きをエネルギーに変換できるシステムを開発し、雨が降っているときは雨粒から、晴れているときは太陽からエネルギーを生み出すことができる太陽光パネルが完成した。

雨粒をエネルギーに変える太陽電池が誕生。太陽光発電の新たな一歩へ

都会でできる風力発電

英ランカスター大学の学生2人が開発したのは、都市を吹き抜けるビル風をエネルギーに効率よく変える風力タービン「O-Wind」だ。あらゆる方向から予測不可能に吹く強いビル風を捉えるため、タービンは直径25cmの球形で幾何学的な穴を持ち、どの方向から風が当たっても固定軸で回転する。このデザインは、国際的な学生デザインコンテスト、「2018年ジェームズダイソンアワード」を受賞した。

都会のビル風をエネルギーに。デザイン賞を受賞した、シンプルな風力発電タービン

都会でできる風力発電

南米チリの首都サンティアゴにある3つの廃水処理施設は、チリ最大の水道会社Aguas Andinas社により、汚水をクリーンエネルギーに変換する「バイオファクトリー」に生まかわろうとしている。これは、バイオファクトリーに都市の生活排水と産業廃水を送り、汚泥などから電気に変換できるバイオガスを抽出するというものだ。汚泥はリサイクルされ、都市建設プロジェクトや農業用肥料として使用でき、下水処理された水は自然環境に放出され、きれいな灌漑用水となる。

都市の廃水をクリーンエネルギーに変える、チリの「バイオファクトリー」プロジェクト

再生可能エネルギー拡大のために、今日からできること

再生可能エネルギーの拡大のために必要な要素は多岐に渡るが、そのひとつは、より多くの企業や個人が再生可能エネルギーを使用することである。規模が拡大するほど再生可能エネルギーのコストは下がり、拡大のスピードも増していくだろう。

2016年の電力の小売全面自由化により、今ではほとんどの個人が電力会社を自由に選べるようになった。再生可能エネルギーの比率が高い電力会社は電気代が高いと思われがちだが、場合によってはむしろ安くなるケースもあるため、現在の電気使用量や家族構成などを踏まえて、一度きちんと比較することをおすすめしたい。

2016年以降、多くの新電力が参入し、電源構成が再生可能エネルギー100%のプランを扱う会社が飛躍的に増えた。そのなかには、電気代の一部を環境や社会貢献活動に寄付している企業も多く、毎日使う電気を通して環境や社会に貢献できる可能性もある。

たとえば、「顔の見える電力」をコンセプトとする電力会社「UPDATER」では、再生可能エネルギー100%の電源を使用できるだけではなく、電気料金の一部が地域や産業の創生に取り組む発電者に届き、再生可能エネルギーの発展などにつながっている。

また、同じく再生可能エネルギーほぼ100%のプランを提供するハチドリ電力でも、国際協力から動物愛護まで多様な社会貢献活動を行う団体に電気代の一部を寄付している。ほかにも、電力の契約者には、無料で社会の課題や生き方を学べる「ハチドリアカデミー」に参加することができるなど、特典も多い。

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大手企業のサステナビリティ・CSR担当者の方であれば、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブRE100への加盟を検討してみてはいかがだろうか。また、昨今では、大手企業がそのサプライチェーンにある中小企業にも再生可能エネルギーへの切り替えを求める流れも加速しているため、中小事業者は再エネ100%利用を促進する枠組み再エネ100宣言(RE Action)に加盟することをおすすめする。加盟すると、再生可能エネルギー導入情報の収集を支援してもらえたり、参加団体間の交流や共創を目的とした脱酸素ウェブコンソーシアムへ参加できたりするなどの特典が得られる。

また、自治体が再生可能エネルギーへの切り替えキャンペーンなどを特定の期間中に行っている場合もあるため、再生可能エネルギーへのシフトを検討している場合はこまめにチェックしておくのも良いだろう。

まとめ

再生可能エネルギーを巡る技術開発は日進月歩であり、現在課題となっている部分もテクノロジーにより今後解決されていくかもしれない。脱炭素に向けて、今後も引き続きその動向を追っていきたい。

※1 原文: ‘Transitioning away from fossil fuels in energy systems, in a just, orderly and equitable manner, accelerating action in this critical decade, so as to achieve net zero by 2050 in keeping with the science’
Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Paris Agreement
※2 「日本のエネルギー 2022年度版 『エネルギーの今を知る10の質問』」自然エネルギー庁
※3第6次エネルギー基本計画素案(経済産業省)
「今後のエネルギー政策について」資源エネルギー庁(2023年 )
※4‘World Energy Transitions Outlook 2023’. IRENA
※5‘Renewable power on course to shatter more records as countries around the world speed up deployment’. IEA
【参照サイト】EU Taxonomy: Commission presents Complementary Climate Delegated Act to accelerate decarbonisation
【参照サイト】国際エネルギー機関(IEA)
【参照サイト】国際再生可能エネルギー機関(IRENA)
【参照サイト】石炭火力発電から撤退する世界の動きと日本
【参照サイト】RE100
【参照サイト】再エネ100宣言(RE Action)
【参照サイト】‘World Energy Transitions Outlook 2023’. IRENA
【参照サイト】‘Renewable energy highlights’. IRENA
【参照サイト】‘Renewable power on course to shatter more records as countries around the world speed up deployment’. IEA
【参照サイト】‘Renewable Energy Market Update – June 2023’ IEA
【参照サイト】COP28に向け、IEAが新たな脱炭素ロードマップ発表。今回のポイントは?
【参照サイト】Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Paris Agreement
【参照サイト】「再生可能エネルギーとは」経済産業省・資源エネルギー庁
【参照サイト】「EU、原発を『グリーン』認定の方針 ドイツやオーストリアは反対」BBC
【参照サイト】‘Nuclear energy’. Fact Sheets on the European Union
【関連サイト】みんな電力
【関連サイト】ハチドリ電力

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