「中国 大気汚染」と検索をすると、そびえたつビルや街中を縫うようにもくもくと湧き上がるスモッグの画像が大量に現れる。行く先が見えず、灰色一色に染まった街の様子と、マスクをして外を歩く人々の画像は、それだけでいかに深刻であるかを物語っている。
中国本土に住む人々は、朝の天気予報とともに大気汚染のレベルチェックが欠かない日課の一つとなっているが、その一方で、外に出ればスモッグが在るという日常に慣れてしまい、マスク着用などの基本的な大気汚染対策を怠る人々も多くいるという。
このような事態が起きている中国で、ゲーミフィケーションの手法を用いてユニークなキャンペーンが開始された。
大気汚染による人体への悪影響やマスク着用の重要性の啓発、そして、汚染に関する市民の認知や意識の向上を図るため、北京電通と日本企業の小林製薬がタッグを組み「Air pollution discount」という、大気汚染レベルの上昇に伴いマスクの割引率を上げるというキャンペーンを打ち出したのだ。
中国では、毎日PM2.5のAQI(Air Quality Index:大気質指数)レベルが放送されており、その数値が危険なレベルにまで上がることも多くある。多くの市民がその数値を心配し、苦しむ中で、「どうすればこの苦痛を軽減し、よりエンターテイメントに大気汚染の数値を日々モニタリングすることができるだろうか?」という思いから、小林製薬とコラボレーションするゲーミフィケーションのアイデアが生まれた。
このキャンペーンの参加方法はいたってシンプルだ。まずは、スマートフォンでモバイルサイトにアクセスをする。そして、AQIレベルによりユーザーの現在地に適したマスクの割引率が適用となり、クーポンとして発行される仕組みになっている。
アプリはリアルタイムで汚染のデータに反応するため、1時間ごとにAQIレベルが変化し、そのたびに最新のマスク割引価格が表示される。クーポンは、中国の大手ECサイトで利用可能だ。
大気汚染といったネガティブな問題の啓発のために、市民に対してゲーム感覚のインセンティブを与えることで楽しみながらその実情を知ってもらい、意識を高めてもらう。さらに、本当にマスクが必要な人々に対してマスクを購入してもらうきっかけを与え、セールスにもつなげる。今回の北京電通と小林製薬が協働したキャンペーンは、ゲーミフィケーションを上手に活用したマーケティングの好事例の一つといえるだろう。
【参照サイト】Air pollution discount
【参照サイト】BEIJING DENTSU