今、世界では商品を一つ購入するごとに同じ商品を一つ寄付する「Buy One, Give One(B1G1)」という取り組みが、企業の社会貢献モデルの一つとして注目を集めている。その草分け的な存在とも言えるのが、米国の靴メーカー、TOMSシューズだ。靴が一足売れるごとに一足を途上国に寄付するという同社のCSR活動は消費者からも高く評価され、大きな事業の成功につながった。
先日、IDEAS FOR GOODではフリーランサーが宿代をスキルで払うコワーキングの仕組みを構築した英国のスタートアップ「gigrove」を紹介したが、同じく英国発のNPO、3Spaceはコワーキングスペースにこの「Buy One, Give One」モデルを取り入れた。
3Spaceが展開するプロジェクト「BuyGiveWork」は、コワーキングのスペースが一つ購入されるごとに、地元のNPOや試験的プロジェクトを行う団体にもスペースが一つ与えられるというものだ。
狙いは、コワーキングスペースを活用するテック系スタートアップ企業や中小企業らと地元のNPOらとの距離を近づけて、相乗効果を生むことにある。資金不足に悩まされているNPOにとって事業に必要となるスペースを無料で確保できるのは大きなメリットだが、一方のコワーキングスペースに入居する企業にとっても、NPOらとの多様な関係性からもたらされる多くの洞察は、事業拡大に大いに役立つだろう。
例えば、ロンドンのバーモンジーにあるコワーキングスペース「Keeton’s & Collett」は、持続可能な食料システムや都市型農業についてのR&Dに取り組むスタートアップや研究者らで構成されるGreen Labに提供されており、その中のFricheという地元のスタートアップはスペース内でレタスの室内垂直栽培に試験的に取り組んでいる。
コワーキングスペースの利用者は、自らレタスを栽培することもでき、Green Lab内で開催される毎月のランチ会にも参加できるなど、コラボレーションの機会が生まれている。このロンドンでの成功を経て、BuyGiveWorkの取り組みは現在マンチェスターへと広がりを見せている。
現在はスタートアップ企業らとNPOらがお互いに寄り添いながら成長していく仕組みとなっているが、非営利事業の成果をより大きくするために、大企業にもこのようなスキームに参画してもらえる方法はないだろうか。
実際に有望なスタートアップに投資する大企業は数多くあるものの、NPOには株式が存在しないため、企業側としては投資対象にあたらず、いくつかの事例を除いて両者の距離は遠いままだ。また、「企業秘密」と言われるように大企業ならではの情報管理体制の厳重さも柔軟なコラボレーションの妨げとなっている。
これらの壁をどう乗り越えるかが課題だ。大企業のCSR、マーケティング部門らが主導して、大企業の社員とNPOがコラボレーションできるようなコワーキングスペースがあれば、事業開発にもつながるより有意義なCSRとなるのではないだろうか。
【参照サイト】3space
【参照サイト】Keeton’s & Collett
(※画像:BUYGIVEWORK @ KEETON’S & COLLETTより引用)