どこに住んでいるかによって、何を食べるかが左右される。アメリカではフルーツや野菜などの健康的な食品が手に入りにくいFood Deserts(食の砂漠)と呼ばれる地域があり、住民がファストフードや加工食品中心の食生活に陥ることが問題となっている。多様な食品を扱うスーパーの数がそもそも少なく、あったとしても栄養価の高い食品は価格設定が高めであるため、低所得者層には手が届きにくいことなどがその原因だ。
糖分や脂肪分がふんだんに含まれる不健康な食事は、買うときは安く手に入るが長期的に見れば糖尿病などの生活習慣病につながり、結果的に「高くついてしまう」ことも多い。
住んでいる地域や所得に関係なく、誰もが栄養価の高い食事を手頃な値段でとれるようにしたい。そう考えたロサンゼルスのセルフ式レストラン「Everytable」は、同じメニューを地域によって異なる価格で提供する取り組みを始めた。
Everytableは、高所得層が住む地域では高めの価格で食事を提供し、逆に貧しい人々が暮らす地域では同じメニューをより低価格で提供する。例えば、ロサンゼルスの中心街にあるレストランでは9ドルで提供しているフードボウルを、ロサンゼルス南部にある貧しい地域では5ドル以下で提供するといった具合だ。
同じメニューを違う価格で提供するというのは一見不平等にも思えるが、場所ごとに金額の違いがあっても、その地域に住む人々にとっての求めやすい価格であるという点は共通であり、所得に関わらず栄養価の高い食事にアクセスできる機会が等しく与えられる。その意味で、このシステムは平等なのだ。
貧しい人ほど不健康な食生活をしているという問題は日本でも見られる。2015年の厚労省の発表によると、低所得者層ほどカロリーを過剰摂取し肥満の割合が高い傾向にある。その理由はおそらく複合的であり、自己管理能力の欠如が問題だという指摘もあるが、Everytableのような方式が広まればその点も含めてより対策が立てやすくなるのではないだろうか。機会が与えられれば人は進んで健康的な食事をとるようになるのか、それだけの問題でもないのか。生活レベルと健康はどのように絡んでいるのか、より明らかになることを期待したい。
【参照サイト】EVERYTABLE
(※画像:Everytable Facebookより引用)