大都市の緑化は年間5億ドル以上の利益を生み出す。ニューヨーク州立大学調査

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都市計画において、これまで緑地は必要経費と考えられてきた。殺伐としたコンクリートジャングルで暮らす人々の心身に潤いを与え、経済活動ばかりに偏らないバランスのとれた環境は、犯罪抑止や子供の健全な成長にも大きな役割を果たすとの発想からだ。

しかし、そんな都会の緑のインフラは、心身の健康に良いだけではなく、非常に多くのコスト節約につながり、都市経済にとってもプラスになることが分かった。

ニューヨーク州立大学(SUNY)の研究者らが公表した最近の研究結果によると、人口過密状態にある世界の10都市では、緑を増やすことで大気汚染の減少、雨水の浄化、CO2の隔離、暖房費と冷房費の半減などにより年間5億500万ドル(約557億円)もの利益が推定されるという。

今回、研究チームはよりグローバルな視点を確保するため、東京、北京、ブエノスアイレス、カイロ、イスタンブール、ロンドン、ロサンゼルス、メキシコシティ、モスクワ、ムンバイと世界各地の大都市を調査した。既存の樹木カバー範囲を推定するために、2006年に米国森林局によって開発されたi-Treeモデルを採用。i-Treeは航空写真を使用して都市の価値と環境利益を測定した。

ロンドンなどで大気汚染の除去、雨水流出の回避、エネルギーの不安定化の回避、炭素隔離などに寄与する木々の推定値や見積もりを数ヵ月かけて計測した。これら大都市の樹木カバー範囲は1人あたり39平方メートルしかなく、世界平均の7,800平方メートルと比較してほんのわずかに過ぎない。カイロでは、土地のわずか8.1%に木々が点在。モスクワでは土地の36%が緑だ。10都市の平均値は20.9%だった。

また、都市の緑化がもたらす具体的な利点は場所によっても異なることが分かった。雨量の少ないカイロでは雨水浄化の面では特別なメリットはなかった。また、他の大都市と比較してエネルギー支出が少ないムンバイもその点ではあまり効果はなかった。一方で、ロサンゼルスは、CO2隔離による最大の利益を得た。

研究者らは、緑のインフラの成果は密度と密接に関連していると結論づけている。つまり、大都市には多くの利益があるということだ。駐車場や他の利用可能な表面に植樹するだけでも緑が居住者に与える利益をほぼ2倍にすることができると主張している。

今回の研究結果により都会に作られた緑のオアシスが「高い経費」ではなく「経済効果のある有効な投資」という位置づけに変わったことで、官民で今後さらに都市の緑地開発が進むことが期待できる。

【参照サイト】How Much Are Trees Worth to Megacities?
【参照サイト】Implementing and managing urban forests: A much needed conservation strategy to increase ecosystem services and urban wellbeing

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