銃社会アメリカで、銃を回収するスタートアップ「GunBail」

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なぜ、アメリカは「銃社会」なのか?それは、アメリカという国が銃を持った民兵の働きにより独立したからだ。

イギリスからあまりに不当な税負担を押し付けられたアメリカ大陸の植民たちは、マスケット銃を手に取って世界最強の軍隊に戦いを挑んだ。銃がなければ、このようなことは不可能だった。だからこそ憲法修正第2条には「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を所有及び携帯する権利を侵してはならない」とある。

全米ライフル協会はこれを根拠に、「悪人の銃を駆逐できるのは善人の銃だけだ」と公言した。誰しもが銃を持っているからこそ平和が保たれる、というわけだ。

だが、銃による暴力は一向に減らない。世界中に大きな衝撃を与えた2012年のサンディフック小学校銃乱射事件。クリスマスの10日前に発生したこの惨劇は、しかし銃規制の流れを加速させるには至らなかった。連邦議会では銃規制法案が否決され、逆に南部州でオープンキャリー法(銃を露出した状態で携帯できることを保証した法律)が成立し、「Gun TV」という銃専門の通販チャンネルまで登場した。深夜、暗い部屋の中で衝動的に銃を購入することができるのだ。

そしてそれ以上に問題なのが、銃のCtoC取引である。アメリカ国内で銃を売買する場合、正式な許可を得た販売業者を通してなければそれは「違法銃」ということになる。だが現実は、フリーマーケットやオンラインでのCtoC取引が活発に行われている。これがある限り、銃は絶対に減ることがない。

そこで登場したのが、「GunBail」というスタートアップだ。アメリカでは、日本以上に「保釈ビジネス」が活発だ。被疑者対象の金融業者が存在するほどだが、その人物が裁判と借金を踏み倒そうとして逃走することもよくある。そうなった場合は弁護士の仲介を経てバウンティハンター、すなわち賞金稼ぎに連絡が行く。被疑者が州をまたぐと、地元警察では手が出せないためだ。

銃を回収するスタートアップ

Image via Gunbail

このように保釈ビジネスは非常に危険なものなのだが、GunBailはそのイメージを180度変えるかもしれない。

「あるもの」を担保に、その被疑者の保釈を支援するというのがGunBailの事業だ。被疑者の家族や友人がスマートフォンのカメラで「あるもの」を撮影し、それを専用アプリを介してGunBailに送信する。その後、実物を配送すれば短期間で被疑者が保釈されるという仕組みだ。その「あるもの」とは、違法銃である。

アメリカでは、17分毎に銃による殺人が発生しているという。それらで使われる銃の多くが、正規の取引を経たものではない。「サタデーナイトスペシャル」とは安価な拳銃の総称だが、これは繁華街が最も賑わう土曜日の夜に銃撃事件が多発することを揶揄したものだという説がある。

それらの銃と引き換えに、犯罪者の更生を後押しするのがGunBailの使命だ。違法銃が被疑者から提出されたという事実を根拠に、地元の法執行機関が保釈に関する手続きを進める。司法取引の仕組みを上手く使った事業だ。

これは非暴力犯罪の被疑者のみが対象だ。だが、だからこそ彼らに「今以上の重い罪を犯させない」という抑止効果が期待できる。町から銃をなくす取り組みは、確かに進んでいるのだ。

【参照サイト】GunBail

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