スウェーデンに本拠を置くアパレル大手、H&Mで廃棄される洋服が、石炭に代わってスウェーデンの火力発電所の燃料として利用されていると、Bloombergが報じた。
H&Mといえば、これまでにも再生繊維やオーガニックコットンなどを使用したり、 店舗内に古着回収ボックスを設置して不要になった衣類を回収し、クーポン券と交換できるプログラムを展開したりするなど、様々な環境活動を行ってきた。このH&Mで廃棄される洋服が、石炭に代わってスウェーデンの火力発電所の燃料になっているという。
現在、持続可能なエネルギーに関する議論は世界中で活発に行われているが、電気事業連合会の報告によると、北欧の森と湖の国スウェーデンの2011年国内発電内訳は水力44%、原子力40%が大部分を占める。廃棄物やバイオマス発電は8%、風力発電は4%である。化石燃料による発電は3%に留まっており、日本の88%(2014年)と大きく異なるのが特徴だ。
そんななか、今回発表されたH&Mで廃棄される洋服が発電所の燃料となっているのは、ストックホルムの北100㎞にある街Vasterasの火力発電所だ。この発電所では2020年までに燃料を従来の石油や石炭から、リサイクルされた木やゴミなど化石燃料ではないものに変えていくという。
この街にある燃料供給会社Malarenergi ABのJens Neren氏は、「H&Mの洋服は燃やすことができる。我々の目的は再生可能なリサイクル燃料だけを使用することだ」と語る。Malarenergiは近隣の町と取引し、燃料用のゴミやH&Mの店舗から廃棄される洋服の調達を行っているほか、イギリスからも輸入ゴミを入手している。
また、どのような洋服が廃棄されるかについて、H&Mは「H&Mが廃棄する洋服は、カビが生えている、我々の厳重な化学基準に合致しないといった、お客様に販売できずリサイクルもできない洋服だ。これを徹底することが我々の義務である」と語っている。
この発電所は現在、15万世帯に電力を供給している。1990年代後半には65万トンの石炭を焼却していたが、先日、Vasterasに石炭を積んだ最後の船が到着した。1960年代に建設され、現在も残る化石燃料発電機2基に供給するためだ。今回運ばれてきた石炭は2020年まで十分に使用できる量だという。2020年には、バイオ燃料とゴミを焼却する新しいボイラーが稼働する。
世界的にエネルギー源の議論・開発が活発化するなか、ファッション業界で生じる洋服という廃棄物を火力発電所のエネルギー燃料として使用する、スウェーデンの新たな試み。これからの展開が楽しみだ。
【参照サイト】A Power Plant Is Burning H&M Clothes Instead of Coal by Bloomberg
【参照サイト】H&M does not burn usable clothes
【参照サイト】電気事業連合会
(※画像: StockStudio / Shutterstock.comより引用)