13億以上の人々が暮らし、進境著しい中国。しかし経済成長を最優先させるマインドと広大が故の行き届かない管理のために、大きな犠牲も伴っている。そのひとつが食の安全だ。
違法な材料の混入や、無力な赤ちゃんが汚染されたミルクで命を落とすなど痛ましい事故が後を絶たず、富裕層は高額であってもこぞって日本産など海外の安全な食品に手を伸ばす。だが本来、食の安全は一部の人がお金で買うものではなく、社会全体で確保すべきものだ。
この問題を解決するべく、IBM、ウォルマート、JD.com、清華大学の国立電子商取引技術研究所の4団体は12月14日、ブロックチェーン技術を活用した食品安全対策「Blockchain Food Safety Alliance(ブロックチェーン食品安全同盟)」を共同で発足させた。
中国における食品サプライチェーン全体の透明性を高めるために、リアルタイムで食品の生産段階から消費までを追跡し、食品の起源、安全性、信頼性に関するデータを収集する。これにより食品管理者の説明責任を担保し、規制当局や消費者などに対して食品の取り扱いに関する情報を提供する。
従来の紙ベースの情報共有では断片的で間違いが起こりやすく管理が困難だったが、食品流通にかかる一連の手続きをブロックチェーンで簡素化、可視化することで、食の安全を実現する。
ウォルマートは、中国の食品安全性に関する研究に多額の投資を行い、サプライヤーとの密な繋がりを通じて食品安全を推進する。JDと協力しながら人工知能(AI)やビッグデータなどのテクノロジーで消費者を保護していく。一方のIBMはブロックチェーンのプラットフォームを提供し、清華大学はテクノロジーと中国の食品安全エコシステムに関する知識を共有する技術アドバイザーを務める。4団体が協力して技術を開発・最適化し、プロジェクトをサプライヤーや小売業者に展開していく。
世界四大文明の一つに数えられ4千年の伝統が息づく中国。「食は中国にあり」というくらい中華料理はポピュラーで、世界のどの都市でも親しまれている。今後、これらの取り組みで食品事故や不正のニュースがなくなれば、中国内外の消費者が安心して「中国産」を食せるようになる時が訪れるかもしれない。
【参照サイト】Walmart, JD.com, IBM and Tsinghua University Launch a Blockchain Food Safety Alliance in China