今や中国は世界第二位の経済大国として政治、経済、テクノロジーなどあらゆる面で圧倒的な存在感を誇っているが、その裏側では急速な経済成長の副作用として大気汚染や環境破壊など様々な社会課題も顕在化している。
一方で、中国はこれらの課題をただ見過ごしているわけではない。IEEFAの調査によれば、今や中国は世界最大の再生可能エネルギー投資国でもあり、2015年には世界の再エネ投資の3割以上にあたる1020億米ドルもの金額を投資している。中国は深刻な環境問題を抱える一方で、世界で最も積極的に環境政策を進めている国でもあるのだ。
IDEAS FOR GOODでは2017年も中国の記事を数多く取り上げてきたが、今回はその中でも特に中国らしいスケールの大きさと大胆な発想が際立つユニークな環境プロジェクトを5つご紹介したい。
01. 世界初となるドローン専用の高速道路
今や「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深圳では、高速道路の再開発プロジェクトの一環として、世界初となるドローン専用の高速道路が計画されている。ドローンが安全かつ効率的に輸送インフラとしての機能を果たすために、ドローン輸送を前提とする都市を作ろうという発想だ。計画の中では大量の排気ガスを排出していた12車線の高速道路は筒状の空中トンネルの中に格納され、大気汚染の問題を解決している。そしてその空中トンネルの上にある緑化された歩道は、都市に住む人々のエコな暮らしを実現する。
02. 生態系を取り戻す「渡り鳥のための空港」
天津港湾で計画されているのは、都市化に伴う生態系破壊の抑制を目的とした、「渡り鳥のための空港」の建設だ。天津では臨港エリアの都市化により鳥が餌を調達できる場所が少なくなってきており、年々渡り鳥の数は減少している。この問題を解決するために、プロジェクトでは鳥が羽を休められる湿地保護区域を作り、森林や池などの緑地を用意する予定だ。そこは渡り鳥だけではなく地域の人々にとっても自然と触れ合える憩いの場となる。
03. 都市を丸ごと森にする「Forest City」
中国の大気汚染問題を解決し、持続可能な未来都市を作ろうと建築家のStefano Boeriが考え出したのが、都市を丸ごと森にしてしまうというアイデア、「Forest City」だ。Forest Cityには数百もの高層ビルが立ち並び、それが人々の住居となるが、すべてのビルが木々やその他の植物で覆われる。このForest Cityはまず広西チワン族自治区の南に位置する柳州市に導入され、2020年には中国初のForest Cityが完成予定だ。
04. 空気を清浄する自転車のシェアリングサービス
中国の大気汚染問題を解決しようと、オランダのデザイナーのDaan Roosegaardeが2000万人以上のユーザーを抱える中国のバイクシェアリングOfoらと提携して進めているのは、走行中に空気を浄化する自転車のシェアリングサービスだ。このスモッグフリー自転車は、汚れた空気を吸い込んで浄化した後にきれいな空気をリリースし、1時間当たり3万立方メートルの空気を浄化する能力を有しているという。自動車ではなく自転車に乗るだけでも大気汚染の軽減には貢献するが、この仕組みが実現すれば、多くの人がサイクリングすればするほどどんどん空気が綺麗になっていく。
05. 大気汚染がひどいほどマスクが安くなるキャンペーン
大気汚染による人体への悪影響やマスク着用の重要性の啓発、そして、汚染に関する市民の認知や意識の向上を図るため、北京電通と日本企業の小林製薬は、大気汚染レベルの上昇に伴いマスクの割引率を上げるというキャンペーン「Air pollution discount」を打ち出した。ゲーミフィケーションを用いて大気汚染に対する啓蒙を行うユニークなアイデアだ。
まとめ
いかがだろうか。いずれもその革新的な発想に驚かされるが、どんなに大胆な解決策でも本当に実現してしまいそうだと思わせるのも中国のすごいところだ。既に経済やテクノロジーに分野では中国が世界をリードしていることは間違いないが、今後は環境やサステナビリティの分野においても中国が世界を牽引する存在となっていきそうだ。