モノやサービスを「所有」するのではなく「共有」することでより持続可能な経済を実現する「シェアリングエコノミー」は、着実に人々の消費の在り方を変えつつある。必要なものを必要な分だけ必要なときにオンデマンドで借りるというスタイルが定着すれば、無駄な資源の利用も少なくて済み、環境や社会に優しい経済の仕組みが作られる。
IDEAS FOR GOODではこれまでにも世界各地のユニークなシェアリングエコノミーサービスを取り上げてきたが、今回はその中でも特にユニークな10の事例をご紹介したい。
01. 太陽光発電のシェアリングエコノミー
オーストラリアのスタートアップPower Ledgerが取り組んでいるのは、ブロックチェーンを活用して個人同士が自宅の屋根に設置したソーラーパネルで発電した電力を自由に売買できる仕組みの開発だ。Peer to Peerの電力売買が実現すれば、電気を買う側、売る側の双方にとって経済メリットが生じる。
02. チャリティに寄付できるP2P保険「Lemonade」
保険業界のシェアリングエコノミーとも言える「P2P保険」の分野で注目を集めているのがニューヨークに本拠を置く「Lemonade」だ。Lemonadeでは、保険加入者が支払った保険料のうち請求がなかった余剰金を、貧困支援や女性支援など自身が関心を持つチャリティに寄付することができる。同じコーズを支援する同志として、できるかぎり保険の請求が発生しないようにお互いを支援しあうことで、より多くの寄付ができるようになるという、P2Pとコーズマーケティングを組み合わせた全く新しいソーシャルインシュアランスだ。
03. 宿泊代をスキルで払える「gigrove」
ロンドン発のスタートアップ「gigrove」は、ゲストをフリーランサー、ホストをスタートアップ企業に限定したAirbnbのようなサービスだ。ホストとなる企業はサイト上にプロジェクトを掲載し、世界中からフリーランサーを募る。応募してきた人材に対しては報酬のかわりに宿を提供し、場合によっては食事をつけることもある。企業側は低予算でグローバルな人材を確保でき、フリーランサー側は宿泊代を抑えつつ、旅をしながら海外のスタートアップに参画することができるという双方にメリットのある仕組みだ。
04. 月額制で世界中に自宅が持てる「StayAWhile」
アメリカ発の「StayAwhile」は、様々な都市にある複数のホテルや家具付きアパートを月額サブスクリプション形式で自由に借りられるという会員制サービスだ。現在レンタル物件の提供をアメリカのニューヨークとマイアミで開始しており、今後は欧州の主要な25都市、中南米など、世界中に拡大を予定している。
05. カナダのトロントにある「モノの図書館」
カナダのトロントでは、本ではなく「モノ」を貸し出すモノの図書館、「Sharing Depot」が人気を博している。Sharing Depotではスポーツ用品、ボードゲーム、キャンプ用品、子供用おもちゃ、パーティ用品などを年会費50〜100カナダドルで貸し出している。これら全ての用品は寄付されたもので賄っているのが特徴だ。
06. 洋服のシェアリングエコノミー「BORO」
同じくトロント生まれの「BORO」は、一度のイベントのために何万円もする洋服の購入を検討している人と、数回しか着なかった高品質の洋服をクローゼットで眠らせている人をつなげる洋服のシェアリングエコノミーサービスだ。従来のドレスレンタルとは異なり、個人同士の貸し借りを仲介する点が特徴で、まさに洋服版のAirbnbと言える。
07. ニューヨーク発のボートシェアリング「Sailo」
ニューヨークとフロリダを拠点に活動する「SAILO」が提供するのは、オンラインでボートを貸したい人、借りたい人、そして操縦したい人を結ぶプラットフォームだ。ボートを借りたいが運転免許を持たない人は、Sailoが公開している船長のリストから操縦士もレンタルすることができる。
08. 最高のデザイン建築に民泊できる「PlansMatter」
著名な2人の建築家が立ち上げた「PlansMatter」は、優れた建築デザインを誇るバケーションレンタル物件やホテルをだけを集めて紹介しているキュレーションサイトだ。素晴らしい建築デザインを独占するのではなく共有し、実際に宿泊して体験してもらうことで、より多くの人にデザインの価値を啓蒙するのが目的だ。
09. ベルリンで広まる電気スクーターのシェアリング
電気自動車の普及における最大の課題である充電スタンドの少なさをシェアリングエコノミーのモデルで解決しているのが、ドイツのベルリンで電気スクーターのシェアリングサービスを展開している「COUP」だ。COUPのサービスでは、スクーターのバッテリー補充をCOUPが行うため、利用者はすぐにスクーターに乗車でき、利用後にバッテリーを補充する必要もない。また、利用区域内であればどこでも乗り捨て可能となっている。
10. ロンドン発、コーヒーカップのシェアリング「Cup Club」
ロンドン発のCup Clubは、RFIDタグがついた世界初となるIoTスマートカップを用いて、消費者にカップのリサイクルを促すエコシステムを構築した。消費者はCup Clubに参加すると、どのショップでコーヒーを購入したかに関係なくこのプログラムに登録している店舗であればどこでもカップを返すことができる。Cup Clubのユニークな点は、RFIDタグとIoT技術の組み合わせによりコーヒーカップの現在地を追跡できるようになっており、ユーザーがこのリサイクルシステムの中にとどまるよう、彼らに対してリワードを与えることができるという点だ。
まとめ
いかがだろうか。今、世界ではあらゆるものがシェアされ、全く新しい消費スタイルが確立されつつある。現在のシェアリングエコノミーはプラットフォームが仲介するモデルが主流だが、今後はブロックチェーン技術がサービスに実装されることで、第三者を介さず個人同士がトラストレスに取引する真のPeer to Peer型シェアリングエコノミーサービスも実現するだろう。
世界人口が増え続け、一人一人の豊かさも増えるなか、限られた資源をいかに持続可能な形で利用しながら経済を発展させつづけるかは人類共通の課題となっている。シェアリングエコノミーはその課題を克服する次世代の経済モデルとして今後も進化していくに違いない。